全員避難

オフィスで仕事をしていると突然大きな音でファイヤアラームがビル中に鳴り響いた。
全員避難だ。
どこの会社にいても学校にいても年に2-3回はこれがある。当たり前だが、避難訓練と違って事前に予告はない。もちろん99%はフォルスアラーム(誤報)なのは、みんな分かっているが、いったん全員ビルから退去しなければならない。どんなに高いビルでも、全員階段で避難だ。
ぼくの働いているビルは14階建てだ。その割には人数が意外と少ないように見えるが、全員が近くの空地に集まって、おしゃべりしたり、タバコを吸ったりしている。*1
しばらくすると他の人が動き始めたのを見て、三々五々ビルに戻り始める。戻るときはエレベーターを使っても構わないが、混雑するので、階段を上がってオフィスに戻る。少し息が切れてちょっとしたエクセサイズだ。
たまのファイヤアラームも、暇なときにはちょうど息抜きできるいい理由ができてよいのだが、手が離せないほど忙しいときは、何もこんなときにと、怒りたくなるときもある。
日本だと、火災報知器が鳴っても「どうせ誤報→だから誰も避難しない」という理屈で、みな忙しそうに仕事をしているが、本当に火災だったら、いつ避難するかどうやって判断するのだろう。それでは何のための火災報知か分からない。
いくら仕事が忙しくても人命の方が大事なわけで、安全が確認されるまでは全員避難というのは、正論には違いない。コントラクターはその間の時給を請求しても構わない。学校などではその間授業は受けられないが、授業料の払い戻しなどはない。

*1:屋外であっても人がたくさんいるところでタバコを吸われるのは迷惑なのだが、ニュージーランドは屋内で喫煙できるところはほとんどないのに、日本と違い路上喫煙の規制はないためか、あまり気にしない人が多い。

スチューデントローン完済

IRD(税務署)からの手紙を開封したら、「あなたはスチューデントローン(奨学金)の返済が終わったので、もう払わないでください。」という通知だった。
長いコースではないが、今の仕事を見つける前に、学校に通っていたことがある。すでに永住権を取っていたので授業料はそれほど高くはなかった。ニュージーランドの学校は国内料金と留学生料金に著しい違いがあることが多い。しかも国内の学生はほぼ全員がスチューデントローンを利用しているだろう。
このスチューデントローンというのは日本の奨学金と違い、成績や家族の収入は関係なく、NZQA認可のコースを受講する人ならば誰でも利用できる。授業料全額のほか生活費も借りられる。卒業後も国内に住んでいればその間の金利も全額補填してくれる(つまり無利子)。借りない方が損というものだ。
ベネフィットの類は永住権を取ってすぐの人は利用できず、2年経ってからということが多いのだが、今のところスチューデントローンは永住権を取ったばかりの人も利用できる。
スチューデントローンの貸し出し業務をしているのはStudyLinkという政府機関だが、卒業後債権はIRDに移管され、返済金は所得税等と一緒に徴収される。
返済額は、残高に関係なく一定の収入*1を超えた分の10%とされている。だから卒業後も仕事がなく、収入がない人は返済する必要はない。ちゃんと卒業後にしかるべき仕事についた人だけ、収入に見合った分だけ返済するのである。
これは給与所得者の場合、給与支払者が源泉徴収するので逃げようがない。会社に雇われるときに、雇用主にスチューデントローンがある旨を申告すると、給与支払担当者が給与支払額に応じて、所得税と一緒にスチューデントローンの返済額も天引きしてIRDに納めてくれる。
冒頭の「もうスチューデントローンを払わないでください。」というのは、雇用主等にその旨を申告して、天引きを止めてもらうようにしてくださいということだ。
ぼくらのようなコントラクターは自営業者なので、所得税等の源泉徴収はないが、日本と同様、前年度の申告額に応じて所得税の予定納税の制度があり、スチューデントローンもそれに準じて前年度の収入に応じた予定納付をしなければならない。*2
よくできているように見えるスチューデントローンの制度だが、この国では学校を出た後、海外に行ってしまう人が多い。海外に行ってしまうと、強制的にスチューデントローンを返済させる制度がないため、海外にいる人の分の滞納が大変多いのだそうだ。
対策は難しいと思うが、その一つとして、永住権を取ったばかりの人は利用できなくなるというのも検討中というニュースの記事を最近見たことがある。というもオーストラリアの市民権か永住権のある人は自動的にニュージーランドの永住権が取れるので、(関連記事:何か不公平)この制度を悪用して逃げてしまうことが可能だからだ。

*1:2010年度は19,084ドル

*2:予定納付の額も残高に関係なく決められるので、返済の最後の年には予定納付の額が残高を上回るという変なことが起きた。

医療費無料

1歳の娘の咳が止まらず、呼吸も苦しそうで、夜もほとんど寝られない。食べたものもカーペットの上に吐き出す始末なので、医者に連れていった。
朝GPに電話して、要件を伝えると、すぐ同日の昼過ぎにアポイントを入れてくれた。我が家のGPは完全予約制で、行って待つことはあまりないのだが、今日は急患が入ったとのことで、少々待たされた。
よく子供の風邪くらいで医者に連れていくと、「こんなのはパナドール(市販の解熱鎮痛剤)飲んで寝ていれば直りますよ」みたいに言われると聞くが、今日はすぐに病院送りになってしまった。
ドクターがすぐその場で近所の公立病院に電話をして、先方のドクターと専門的な申し送りをし、紹介状を出してくれた。
公立病院は混んでいて予約がとても先になるという話も聞くが、今日はすぐ行ってくれと言う。
うちのGPは6歳未満は無料だ。*1だから支払いはないので、受付はスルー。そのまま車に乗って病院へ。
病院へ行き、小児科の受付で紹介状を出すと、すでに話が通っていて、待機していたナースが病室のベッドへ案内してくれる。
ナースが体重などを量った後、ほどなく優しい女医先生が出てきて、時間をかけて問診。吸引剤が利くかどうかを試すために間隔を空けて何回か吸引措置。この間1時間。結局この吸引剤とステロイド剤、抗生物質を処方してもらって、病院の薬局で購入して帰った。
公立病院は無料だから病院には「会計」がない。先生が帰っていいといったらどこにも寄らずにそのまま帰ってよい。ちょっと不思議な感じだ。処方薬は何種類もらっても1回4ドル90セント。*2
結局今のところ一番大きな出費は7ドル99セントのカーペットのシミ取り剤だ。

*1:GPによって違うらしい。

*2:前の労働党政権のときに決まったことだが、今のところまだ見直されてはいない。

「忙しい」の質

どうもここ数週間忙しい。NZに来て以来こんなに忙しかったことはない。

今までウチのチームははっきり言っていったんリリースをしてしまうと、次のBRD(要件定義)が来るまで間が空いたりして、どちらかというとヒマなことが多かった。

それがどうも最近忙しい。唯一のパーマネント(正社員)だったチームリーダーが家族の事情で退職して、その代わりの人が採用されるまでの期間が長かったり、着任してもしばらくは様子が飲み込めるまで戦力にならなかったり、1週間休暇を取る同僚がいたりしたり、ふだん3か月に1回のリリースが、たまたま今は1か月の間をおいて2回続いていたりするのが原因だろうと思うのだけれど、まあそれはいい。

暇なときには、一つのタスクをじっくり調べながらできるのだけれど、こう忙しいと、一つのタスクの内容を理解するまもなく、別のことを他の人に言われたりする。そういうときに限って、どうでもいいような会議に出なければならなかったりして、締め切りを過ぎた仕事を抱えたまま、昼飯を食べ損ねて夕方になってしまったりしている。

どうもいろいろなことがマルチタスクで進むと、すぐCPU100%になってしまい、切り替えるのが苦手だ。日本で仕事をしているときにはよくそういうことはあったのだけれど、そういう生活から離れて長くなり、忙しさに対する耐性が失われてしまったようだ。

ぼくらは週40時間を上限として働いた時間分給料をもらえるコントラクターなのだが、40時間以上働いてしまって、うっかりそのとおりタイムシートを出すと、「何で」とか聞かれて、面倒なことになる。だからまずは時間内で終わらせるのが大原則で、遅くなったときにはなるべく週内で他の日に早く帰るようにしている。

考えてみると、日本では仕事をたくさん抱えても、どうせ残業して片づければいいや、というところがあったかもしれない。NZは本当に残業する人が少ない。6時になるとフロアの最終退出者になってしまうことも珍しくない。6時半からは電車も本数が減ってしまい、車内も空いていて寂しくなる。

終電まで残業する忙しさと、時間内に終わらせなければならない忙しさとは少し質が違う気がした。

クルマを追突された

以前のブログで、駐車中に何者かに蹴飛ばされたドアを板金屋で直した話を書いた。(車が凹(へこ)むと気分も凹む) ドアを2枚交換したが、excess(免責額)の300ドルだけで済み、翌年から保険料が上がることもなかった。

先日またクルマをぶつけられた。今度はラウンドアバウト(ロータリー状の交差点)で一時停止中に、後ろのクルマが追突したのだ。今回は相手が非を認めて、住所と氏名も聞くことができた。

損害は、リアバンパーの取り付けがちょっとずれたくらい。保険があるとはいっても、これではexcessの300ドル以下なのではないだろうかと思われた。相手の連絡先が分かるといっても、自分で連絡して交渉してお金を払ってもらうのは難しいだろう。結局自分で払うことになるだろうと覚悟した。

帰ってすぐに保険会社のWebサイトからクレームをした。前も書いたけれど、Webサイトのオンラインフォームに入力すれば、紙の請求用紙は書かなくてよいというのが良い。相手の住所氏名を入れるところもある。翌営業日に保険会社から電話があり、前回と同じパネルビーター(板金屋)に行くように指示された。意外だったのは、こちらが停まっていたので、excessは免除ということだった。

保険の契約を詳しく読んだことはないが、相手が分かっていて、加入者に責任のない「もらい事故」の場合には免責額が免除になるようだ。つまり自己負担ゼロ。

相手の言い分もあるだろうから、相手に連絡を取ったり、相手が保険に入っていれば相手の保険会社と交渉したりするのだろうが、そのあたりは全く関わる必要がない。助かる。

写真を取るからクルマを持ってきてくださいとパネルビーターから連絡があり、家人が持っていってくれた。その場で翌週の火曜日に作業を予約。

保険の承認がおりたのかどうか、その辺は何の連絡もなく、とにかく予約した火曜日にクルマを置いてくる。週末に車を使うのですがいつできますか、と聞いたところ、明日(水曜)の夕方とのこと。案の定、水曜日には何の連絡もなし。2回催促して、結局金曜日の夕方に引き取ることができた。

実は今回ぶつけられる前から、バンパーは自分でどこかにぶつけて少し傷が付いていた。今回のもらい事故のおかげで、自己負担なしでバンパーが交換され、すっかりきれいになった。安くない保険料だが、少しは取り返した気分だ。

親切な人がいた

今朝はまた電車のダイヤが乱れていて混雑が予想されたので、初めから駅には行かずに家の近くからバスに乗ることにした。
路地からバス通りに出ると、ちょうどバスが走り去っていくところだった。あわてて手を振ったが、バス停から少し離れているせいか、止まってはくれなかった。
次のバス停は乗客が多いので、ひょっとして走れば、次のバス停で捕まえられるかもしれないと思ったとき、知らない人の運転する車が止まって、身振りで乗るように言われた。
事情を見ていて、バスを追いかけてくれるというのである。
案の定、バスは次のバス停で止まっていて、乗せてもらったクルマはバスを追い越し、二つ先のバス停で降ろしてくれた。
親切な人もいるものだ。なんだかニュージーランドにいると、知らない人までみんな友達みたいだ。
この話には落ちがある。バスに乗り込んで行き先を告げると、「このバスは行かないよ。後から来る別のバスに乗って。」と言われた。違う路線のバスを追いかけていたらしい。

orがどこまでかかるか

また銀行の話。住宅ローンがある人はゴールドクレジットカードの会費が無料になるということなので、カードを作ったのだが、本当に会費がかからないのかどうか行員に確認すると、人によって言うことが違うのだ。

Webでも紙のブローシャーでも手数料の規定は次のように定義されている。

$40 every six months (waived if you have an outstanding home loan balance or deposits of $150,000 or more on the fee assessment date).

6か月ごとに40ドル。(基準日に15万ドル以上の預金残高または住宅ローン残高のあるお客様は免除)

悪文の雰囲気をなるべく活かした訳をつけてみた。これは悪文である。

悪文というのは

太郎は笑いながら逃げる妹を追いかけた。

みたいなやつだ。(笑っているのが太郎なのか妹なのかわからない。)

これも

1

(an outstanding home loan balance)
or
(deposits of $150,000 or more)
(住宅ローン残高)
または
(15万ドル以上の預金残高)

なのか

2

(an outstanding home loan balance) or (deposits)
of $150,000 or more
15万ドル以上の
(住宅ローン残高)または(預金残高)

なのかわからない。つまり住宅ローン残高が15万ドル未満になったときに会費が免除になるのかならないのかがわからないのだ。

銀行の人に聞いても相手によって言うことが違う。日本から来たばかりだと驚くのだが、NZではよくあることだ。

この件で2回電話したが、最初の人は「住宅ローン残高が15万ドル未満だと会費をいただきます」と少し自信なげに言った。後日「いつ会費がかかりますか」と聞いたところ、このときの人は「住宅ローン残高がある人は残高に関係なく会費は免除です。15万ドルは預金残高についてです。」と自信たっぷりに断言した。

Webサイトの質問フォームから質問すると、最初は質問の趣旨を無視して上の説明をそのままコピペしてきた。2回目は1週間くらいしてから「15万ドルは預金残高かローン残高の両方にかかります」と回答が来た。

インターネットバンキングにログインした中にあるセキュアメールで問い合わせても、15万ドル未満の住宅ローン残高だと免除にならないとの回答であった。

職場の人にどう思うか聞いてみたところ、一読して直感的には、2のように解釈する人が多いようだ。しかし上のように括弧を付けて見せると、たしかに1のような解釈も可能だと言ってくれる。

今のところどちらかというと、1の方が分が悪い。問題は課金のプログラムを書いた人が、これと同じBRD(仕様書)を見たとしたら、どちらに解釈してコードを書いたかだろう。

書いた人の意図を斟酌するとぼくは1だと思う。そうでなければa home loan balance にoutstanding(未払いの負債、貸付残高)という修飾語が付いている意味がわからない。それに、銀行の利益に貢献する客に会費を免除しているとしたら、15万ドルの預金残高があるお客と、15万ドルの住宅ローン残高があるお客が同じであるはずがない。住宅ローンの残高の方が預金残高よりもハードルが低くなければならない。

ぼくがプログラマだったら、後でテスターに違うとか言われたくないので、箇条書きにしてBRDを書き直してください、とBAに言いたい。