失業手当を申請する

前回の記事に書いたように、失業中である。すぐ次の仕事が見つかるだろうと甘く考えていたが、すでに3か月目だ。今のところ貯金も家もあるので、日本の生活保護に相当するものには当分該当しないだろうが、失業給付に相当するものがあるだろうということに気づいた。
ニュージーランドには雇用保険というのはなく、日本のようにあらかじめ雇用保険料を徴収してそこから失業給付を支払うということはない*1。つまり年金などと同じく税金で負担している。日本ではどうか知らないが、ぼくのようにコントラクター(つまり形式上自営業)であっても、実体として失職して求職中であればもらえるはずだ。
こういうのはWork and Income(略してWINZ)というところでやっているという知識はあった。WINZのオフィスはどこの町にもある。しかし、経験的にニュージーランドの役所というのはアポなしでぶらっと行っても詳しい話が聞けるということはない。

まずはWINZのWebサイトで調べてみた。どうやらJobseeker Supportというのが失業給付に相当するもののようだ。

You may get Jobseeker Support if:
you can work full time and you're taking steps to look for work, OR(略)
To get Jobseeker Support you generally need to be:
not in employment and looking for a job, OR(略)
You also need to be:
willing to accept suitable employment
aged 18 years or over, or 19 and over if you have dependent children
a New Zealand citizen or permanent resident who has lived here for at least two years at any one time since becoming a citizen or permanent resident, and who normally lives here.
http://www.workandincome.govt.nz/individuals/a-z-benefits/jobseeker-support.html

つまりフルタイムで働くことが可能で、職探しのステップを踏んでいるならば、Jobseeker Supportがもらえるかもしれない。今雇われていなくて仕事を探している、適当な雇用があれば受ける意思がある、子供がいない人は18歳以上、子供がいる人は19歳以上でNZ市民か永住外国人で2年以上住んでいること。これに該当する人はさらに細かい条件を読むようにというのがあるが、まあおおむね同じことをもう少し厳密に定義して言っているだけだ。貯金や家がある人はダメとは書いていない。

さらによく読むと、申請する前にやらなければならないこと(Pre benefit activities)があるという。

  • 職探ししている証拠の提出
  • Work for Youセミナーに参加すること
  • Jobseeker Profileを作成すること(求職票みたいなものか)
  • CVを提出する
  • ケースマネージャーとの面接

申請書はオンラインで提出する。割と最近まで紙での申請だったらしいが、現在ではオンラインでしか受け付けない。家にパソコンがない人はWINZのロビーにあるやつを使わせてもらえる。

さっそくオンラインで申請書を記入した。家族に関することなどかなり記入項目は多いが、永住権の申請に比べれば楽かもしれない。居住状況、貯金の額なども聞かれる。記入が終わると、受付番号がもらえる。次は電話で最寄りのWINZのアポイントを取るようにとのことである。

指定された0800(通話無料)番号に電話する。オペーレーターが出るまで10分以上お待たせ音楽を鑑賞して待つ。15分はかからなかったと思う。
Jobseeker Supportの申請の旨を伝えると、名前に住所、何が起きたか、家族についてなどなど、申請した内容とほとんど同じことをまた聞かれて、「それではWork for Youセミナーに参加してください。」ということで、直近の最寄りのWINZで開催されるセミナーに予約を入れてくれた。週に2回あるらしい。さきほどのオンライン申請の受付番号は最後まで聞かれなかった。
セミナーに参加。WINZに行っても会場がどことか書いていない。レセプションに並ばなければならない。時間通りに行ったが、ぎりぎりだったので、レセプションで5分位待たされてやや遅刻。もちろん時間通りには始まらない。会議室には目に覇気がない若者たちが15人くらいどんよりとした雰囲気で私語もせずに座っている。
セミナーは30分くらいで、失業給付は最低賃金と比べても非常に低い金額なので、ちゃんと職探しをするようにとか、週に10件は応募しなさいとか、やりたい仕事じゃなくて出来る仕事をとか、まあそんな話だったと思う。誰もメモとか取っていないし質問もない。オンライン申請の仕方の説明もあった。次に持ってくるものとして、オンライン申請の受付番号のほか、IRDナンバー(納税者番号)や銀行口座番号、身分証明書など。出席は取ったが、IDの提示などは求められなかった。(身代わり受講できてしまうことになるが、そこはニュージーランドではよくある性善説制)
その日もこれらの書類は用意していったのだが、この日は純粋にセミナーだけで、ケースマネージャーと会うためには別途またコールセンターに電話してアポを取らなければいけないらしい。
帰ってすぐ電話して、また15分くらい待って、1週間先のアポが取れる。
アポの時間に行ってレセプションに申し出てもそれから40分待ちでケースマネージャーに会えた。また同じことを聞かれて、ケースマネージャーがそれを目の前で入力していったり、オンライン申請の内容を見ながら別の画面のシステムに入力したりしている(!)。二度手間を防ぐためになるべく書類は用意していったが、それでも不足があって、次はアポは取らずにレセプションに出せば良いと言われた。
不足していた追加書類は

  • 受給者の義務について書かれている書類にサインして持ってくる。(パートナーも)
  • パートナーのIRDナンバーが分かるIRDからの書類
  • Personalised detailという書類を記入してくること(結局手書きの書類にまた同じことを書いてサインする)
  • 貯金の額の証明
  • 所得の証明として、コントラクトの開始、終了、直近52週の収入、ホリデーペイ(有給休暇の買取のようなもの)が分かるもの

受給者の義務というのは、求職活動をしなければならないとか、申請内容に変更があったら報告しなければならないとか、海外旅行をするときは申告しなければならないとか(海外にいる間は支払われない。)、パートナーも子供が5歳以上だったら(学校に行くので)職探しをしなければならないとか、そんなようなことであった。

貯金の額を証明しろといわれても、ビザを取るときのように貯金が「いくらある」ことの証明はできても、「いくらしかない」ことの証明は悪魔の証明というやつで難しい。最近は銀行のステートメントも電子化が進んでいて紙のものはもらっていない。それでも、オンラインバンキングの画面を印刷して持っていったら、少なくともレセプションでは受け付けられた。
所得の証明は、1年分の銀行のステートメントを印刷していくわけにもいかず、契約書でよいというので、それを提出した。前のジョブエージェントはひどくそういうことにいいかげんで、初めから契約の期間は間違っているし(誰かのコピペで適当に作ったのか、期間と終了日が矛盾している)、契約が更新されても更新の書類は作ってくれなかった。でもそれしかないので、とりあえず契約書を出した。契約書は何ページもあるので、全部読んで上記をチェックするのは、その分野の専門の人でもないと結構大変だ。こういう点、加入日と脱退日をきちんと管理している日本の雇用保険制度というのは優れていると思う。
レセプションにこれらを提出したところ、レセプションの人はとりあえずスキャンしてどの不足項目に該当するか紐付けして、ケースマネージャーにメールした(ようだ)。妥当性のチェックはケースマネージャーがするのだろう。ホームローンの申請であれば、銀行は勝手に取引履歴を見てくれるので、収入や貯金額の証明は簡単なのだが、おそらくWINZはそこまでしないだろう*2。例のいいかげんな契約書でダメと言われたら、本当に1年分の銀行のステートメントを印刷して持っていくか、エージェントに一筆書いてもらうしかないかもしれないなあ。
レセプションに追加書類を提出して1週間になるが今のところいいともダメともまだ何の連絡もない。サイトによると通常最初の支払まで2-3週間かかるとのことだ。現在のJobseeker Supportの金額は25歳以上で最高$206.21ドル/週となっている。
なお、2013年末のニュージーランドの失業率は6.0%で失業者数は147千人だそうである*3。2012年の7.3%をピークとして改善傾向ではあるが、ぼくが以前就職した2008年8月当時の失業率は4.0%、失業者数は97千人だった。

*1:労災にそなえた社会保険(ACC)はある。

*2:本気でやれば職権はあるかもしれない

*3:http://www.stats.govt.nz/