新年度予算が発表に

昨日のトップニュースは新年度の予算が発表されたこと。今日も次々と予算関連の記事がアップされている。
http://www.stuff.co.nz/business/budget-2011/more_headlines

2月に発生したクライストチャーチ地震の復興費の捻出のため、緊縮予算である。Kiwisaver(日本の財形年金貯蓄に類似)の政府の補助のカットとか、Working for family(日本なら子ども手当?)がもらえる所得のボーダーが下がるとかがメインである。Kiwi Bondという震災国債みたいなのも出るらしい。
http://www.stuff.co.nz/business/budget-2011/5026887/Quake-recovery-to-get-Kiwi-Bond-boost

日本の新聞だと、予算が発表されると必ず「夫婦子供2人の標準世帯でこんなに負担が増えます」みたいなステレオタイプの記事がイラスト付きで載るのがお約束だと思うのだけど、こちらの報道はもうちょっと冷静だ。見出しは多少煽り気味の時もあるけれど、だいだい記事は発表内容を淡々と伝えているだけで、オピニオンのコーナーで賛否両論を紹介しているが、まあ全体としては、まあしょうがないんじゃない、こんなモンでしょうという感じ。職場の同僚の話でも、「国民の負担が増えてけしからん」みたいな意見はなく、「ああそうなんだ。地震があったからしょうがないよね」くらいが大勢だ。

何しろ国の規模が小さいので、何でも文句は言うが負担増はダメ、国が何とかせい、みたいな無責任な意見は少なくて、割と国の問題は自分たちの問題と考える人が多い。だから大きな変更の意思決定も理解が得られて進みやすい。これは国が小さいことのメリットだと常々思っている。

財務大臣によると先の地震による経済損失は150億(NZ)ドルでGDPの8%に相当するのだそうだ。それを伝える記事には続けて、3月のジャパンの日本の地震とツナミによるダメージは同国のGDPの3-5%に相当すると参考情報が書かれている。各紙とも同じことが書いてあるから、たぶん財務大臣が続けてそう言ったか、記者会見の資料にそういう情報があったのだろう。つまりそれだけ相対的にダメージが大きい、だから国民負担にご協力を、と言いたいわけだ。

日本の名目GDPは5兆USドルくらいだから、地震とツナミによるダメージは1500億ドル(US)から2500億ドルくらいと言っているわけだ。ふーん。

いや、それは物理的なダメージだけで、企業の生産活動の停止によるダメージや、物資不足や過剰自粛による消費停滞のダメージが入っていないでしょうとか、そもそもまだこれからどんどん増えそうな福島第一原発の損害や補償が入っていないでしょうとか、いろいろツッコミどころはあるわけだけれども、まあそれはここでは議論しない。

ただ気づいたのは、こういう大災害の復興費用は、「国」という単位で負担しなければならないということだ。世界各国から災害直後の人命救助の支援や、被災者のための義援金は送られてくるが、莫大な復興費用そのものは発生した国が負担しなければならず、誰も助けてはくれない。民間の損害の一部は保険でカバーされるが、国の災害支出をカバーする保険制度はない。

つまり、クライストチャーチ地震規模の災害がオーストラリアや日本のような大きな国で起きていたら、それほど政府の財政に対するインパクトは大きくなかっただろうし、逆にニュージーランドの南島とか日本の東北地方が独立した国家だったら、行政サービスのダウングレードはより著しいものになっただろうということだ。

ニュージーランドのような小さい国は、意思決定が容易で変化に強いが、大災害のような大きな財政支出には少し弱い、と思った。でもまあ今のところ増税というわけでもないし、日本のような巨額の国債残高を抱えるわけではないし、この程度で済んで良かったというのが本当のところだ。