NZの電気代は高いのか

生活感覚から、NZは日本と比べて電気代が高いという人がいる。原発がないから電気代が高いのだという人もいる。本当だろうか。
日本のように電力会社が地域独占になっているのは今では先進国ではむしろ少ないようだ。NZでも他の欧米諸国同様、消費者は複数の電力会社の料金プランを比較して、自分のニーズにあった電力会社と契約することができる。
ぼくもいろいろ比較してシミュレーションしてみたが、どこもだいたい似たり寄ったりだ。
ここではGenesis Energyのウェリントンの料金のうちClassic Planというのを見てみると、固定料金が1日あたり34.50セント、従量料金が1kWhあたり23.64セントである。*1
東京電力の従量電灯Bで40Aの契約だとすると、固定料金が1か月あたり1092円、従量料金は最初の120kWhまで(第1段階料金)1kWhあたり17.87円、120kWhをこえ300kWhまで(第2段階料金)22.86円、300kWhを超えた分(第3段階料金)は24.13円である。http://www.tepco.co.jp/e-rates/individual/data/chargelist/chargelist01-j.html
©TEPCO
今円安になっているが、今日のレート66.16円/1NZドルで換算すると、Genesisは固定料金が1か月696円、従量料金が一律1kWhあたり15.64円ということになるので、それでも東京電力と比べるとずいぶん安いのである。
それでもなぜ高いという気がする人が多いのかというと、3つほど理由が考えられる。

そもそも日本でいくら払っていたか知らない

日本では自分で電気代など払っていなかったが、NZに来て初めて所帯を持った人とか、日本では自動引き落としで特に気にしていなかったという人が多いのではないだろうか。*2

脳内換算レートが高い

以前ニュージーランドドルはいくらなのという記事を書いたことがあるが、いくらで換算するかいうのは実は難しい。1ドル100円くらいで暗算している人にとっては、NZの物価は何でも高い。

電気の使用量が多い

日本ではガスがない家というのはまずないが、NZではガスを入れていない家が多い。そういう家では料理もシャワーも暖房もみな電気だから、特に冬期の電気使用量は跳ね上がる。そもそも電気代の大半はシャワーのお湯だろう。日本ではガスでお湯を沸かすのが普通だ。
それから一つ一つの家電の電気使用量も大きい。食器洗い機なんかも日本のように小さいのはない。暖房器具も日本では気を付けないとブレーカーが上がってしまう1200Wくらいのものが普通だ。
うちは日本にいるときには第3段階料金になる300kWh/月を超えることは、真夏のクーラーを使うとき以外はまれだった。こちらではガスを入れているというのにそれでも300kWh以下の月のほうが少ない。
結論としては、NZよりも日本のほうが電気代の単価は高いが、ガスが普及していて、住宅もコンパクトで小さい家電が多いので、電気の使用量が少ないのであろうと考えられる。

*1:税込。期限内に支払った場合

*2:このたびの日本の電力不足で多くの人が電気料金についてのさまざまな提案をされているが、普段立派な見識を述べておられる方でも、そもそも以前から日本の家庭の電気料金はたくさん使うと単価が高くなる料金体系であることを知らない人が多いようで、意外な気がした。使用量抑制のためにそうなっているのでいるのであろうが、知られていないのでは抑制にならないと思う。