オーバーランダー号存続

8月9日の記事で、この国の最大の都市と首都を結ぶ長距離列車「オーバーランダー号」が9月30日で廃止になることを書きましたが、最終列車の前日という土壇場で運営会社から存続が発表になりました。政府に求めていた補助金は拒否されたにもかかわらず、週末のみに減便ということで存続が決まったということです。

ぎりぎりまで交渉を続ける組合のストライキ交渉のようで、どうにも茶番くさいですな。

鉄道というのはたくさんの専門職の人が働いているわけで、来月から他の仕事をするはずだったけど、2日前になってそれはなし、なんてはずはないのです。だから茶番だって事を知っていた人はたくさんいたはずなのです。

運営会社は補助金獲得の駆け引きには失敗しましたが、なくなるとの報道で、列車は毎日予約でいっぱいでしたから、思惑の半分は当たったでしょう。

しかし、この手は何度も使えないという問題があります。

私は鉄道は残してほしいと思っていますが、納税者の一人として、補助金を投入するのは反対です。鉄道がなくて困るのは、観光産業だけで、観光振興策にはもっと効率的な投資対象が他にもあると思うからです。鉄道のような古い産業や既得権を政府が保護し、健全な財政と市場競争を阻害するような、日本と同じ失敗をこの国にしてもらいたくありません。そんな失敗をかつて克服できた国だからこそ、この国に移住したのです。

今のオーバーランダー号は交通手段としてバスや飛行機と競争するのか、観光対象として存続させるのか位置づけが中途半端で不明瞭です。バスや飛行機との競争に勝てずに、利用者が減っているとか、12時間という時間が長すぎるという運営会社の言い訳は前者の側に立っていると思われます。

オーストラリアの大陸横断鉄道は3泊4日の豪華列車としてよく知られています。バスや飛行機と、値段や時間で競争することが間違っているのです。今のオーバーランダー号は設備も古くてサービスも貧弱ですが、以前は菓子や飲物のサービスもあったと聞きます。儲からないからサービスが低下し、さらに利用者離れを招くという悪循環ではないでしょうか。

政府は補助金なんかを出さずに、こんなやる気のない運営会社からさっさと運行権利を取り上げてしまい、資金力のある観光会社に権利を与えて自由にやらせればよいのです。イギリスやヨーロッパから豪華列車を取り寄せても走らせるもよし、ヨーロッパ式に1等と2等のクラスを設けて、1等は食事付きで飛行機よりも高い値段を取り、2等は以前と同じ古い車両でバス並みの値段にしてもよし。保存鉄道からSLを借りて牽引させるのもよし(もうやっているって)。ブラフの廃止予告なんてせこい駆け引きをする前に、いろいろとやるべきことはあるのではないでしょうか。