SLに乗った

ニュージーランド唯一の長距離鉄道Tranzrailが一日一往復だけオークランドとウエリントンの間を走らせているオーバーランダー号が、オフシーズンの特定の土曜日に一部区間をSLで走るという情報を入手しました。
保存鉄道などで週末を中心にSLが走っているのは知っていましたが、首都と国内最大の都市を結ぶ幹線鉄道の定期列車がSLで走るというのは、もちろん日本ではあり得ません。鉄道は交通機関というより完全にレジャーとなっているNZならではの企画です。
ということで乗ってきました。
通常通り朝7時半にオークランド・ブリトマート地下駅をウエリントン行きのオーバーランダー号として出発します。このときは通常通りのディーゼル機関車です。客車は4両編成、それぞれ座席の配置や色が異なる車両ですが、自分で選ぶことは出来ません。プラットホームでのチェックインの際に指定された席に座ります。日本やヨーロッパの最新の列車に比べるとやや客車は古い感が否めません。レトロ車両というには新しすぎて、中途半端です。車内は空調完備で快適ですが、デッキのドアは手動です。
ウエリントンまで全部乗り通す気力と資金力がないので、今回は、途中のオトロハンガで下車し、同駅から16キロ離れた、有名なワイトモケーブを見物し、帰りも列車に乗るという計画を立てました。
オークランド郊外のプケコヘで蒸気機関車をつなぎ、途中ハミルトンに停車、時刻表ではオトロハンガ到着は通常ダイヤと同じ10時25分ということになっています。帰りは同じく朝7時半にウエリントンを出た列車がオトロハンガを午後4時10分に停車するため、5時間以上観光の時間がある計算になります。
列車は予定通り、8時半にプケコヘに到着。待望の蒸気機関車が先頭に連結され、乗客は皆ホームに降りて写真タイムです。ホームに改札口などないので、乗客でない見物人もたくさんいて、いつ席に戻ったらよいのか分かりません。




すでにプケコヘを出る時点で10分以上遅れ、所詮SLなので遅れを取り戻せるわけでなく、ハミルトンについた時点で30分近く遅れ、ここで消火栓とホースでつないで給水です。そのため長時間停車で、また、のんびりと写真撮影タイムとなりました。
次の停車駅がオトロハンガ。降りた乗客は我々ともう1グループくらいでした。予約していたシャトルタクシーは遅れた列車を待っていてくれて、ホスピタリティあふれるドライバーのBillがオトロハンガとワイトモの行き帰りともガイドしてくれました。



ワイトモケーブは有名な観光地なので説明は省きますが、確かに世界中から観光客が来る価値のあるところでした。昨年火災があってワイトモケーブの入り口の建物が焼失してしまっていたので、切符売り場やトイレは仮設のもので、売店などはありません。
ドライバーのBillは我々二人だけのために約束の時間に再び迎えに来てくれて、来たときと別の、景色の良い裏道を走ってくれるというサービス精神旺盛です。さらに列車まで時間があるので、オトロハンガのキーウィハウスまで案内してくれました。もはやシャトルというより貸し切りタクシーです。ここは比較的明るいところでキーウィが飼育されていて観察しやすく、その他ローカルの鳥がたくさん飼育されていて見る価値のあるところです。ここに案内したことで彼にコミッションが入るのかどうか知りませんが、窓口の人に行って、入場料を割引してもらいました。
列車は4時10分なので4時に迎えに来てもらう予定なのですが、4時がキーウィの餌付けの時間なのでどうしても見ていくように、窓口の女性と、ドライバーの彼が熱心に勧めるので、キーウィの餌付けを見てから行くことにします。
Billが言うには、列車は絶対に時間通りに来ない。もし乗り遅れたら俺がオークランドまで送ってやるというのです。
キーウィの餌付けを見て、4時10分ちょうど頃に駅に着きましたが、やはり列車は気配すらなし。駅員は10年以上前からいないという無人駅。他に乗客らしき人は2組だけ。いったいいつ列車が来るのやら誰も分からず。結局列車は30分ほど遅れて到着。



その後も列車は急ぐ様子もなく、ハミルトンに到着、また給水で長時間停車。日が暮れて、ことこと走る列車の振動でうとうとしているうちにプケコヘに到着。ここでSLとお別れです。すでにオークランド到着予定の7時20分を過ぎています。オークランドには9時少し前に到着。すっかりおなかが空きましたが、なかなか充実した日帰り旅行でした。
参考情報として、車内には軽食と飲物が取れるカウンターがありますが、まああまりたいしたものはありません。あと停車中は利用できません。ウエリントンまで行く人は途中、降りて昼食が取れる長時間停車があるようです。
なお、SLはウエリントンまで行くわけではなく、オトロハンガの次のTe Kuitiで切り離され、逆方向のウエリントンから来る列車を待ち、再びプケコヘに戻ります。
もう一つ参考情報としては、気の良いドライバーBillがぜひ日本の友達にワイトモのベストタクシーを紹介しろと言うのでここで宣伝しておいてあげることにします。読者の方がもし列車・バスなどでオトロハンガ経由でワイトモに行くときには彼のシャトルタクシーに乗ってあげてください。値段は一人片道9ドルです。途中寄り道しても変わりません。