Give way ルールが変わります

ニュージーランドの交通ルールには右折優先というのがあって、慣れないうちはもちろん、慣れてもちょっと難しい。
移住したばかりの頃にこんな記事を書いたことがある。続:NZ移住Blog:右折優先の不合理
図はどちらも赤い車(実線)が青い車(破線)に優先する(Give way)とされている。青い車は赤い車が行くまで待っていなければならない。赤い車は躊躇したり、不必要に譲ったり、お見合いになったりせずに、円滑にさっさと進まなければならない。

右の図のように、青い車が左折しようとするときに、反対側から右折しようとする車(赤)が来たら、赤い車が右折するまで待つということになる。
70年代に導入されたときには、右折する車がいつまでも交差点の中にとどまっていることを防ぐために作られた、画期的かつ革新的な交通ルールだったのだろう。ニュージーランドは国の規模が小さく、よく世界に先駆けた画期的な制度が導入されることがある。実験国家と言われるゆえんだ。古くは婦人参政権、付加価値税(消費税)や電波オークションの導入も早かった。EFTPOS(デビットカード)の導入・普及だって早かった。
しかし、右折優先ルールは革新的すぎたか、他の国がついてこなかった。オーストラリアの一部の州でも導入されていたが、90年代に廃止されている。
運転してみるとわかるが、現実はこの図のように単純ではない。
まず、左折するときに反対側から来る車の方向指示器を確認することは、難しいことがあり、直感的にも見落としやすい。特に複数車線の広い道路の場合にはなおさらだ。
さらに、当たり前だが右折車よりも直進車の方が優先だ。右の図の青い車は、後ろから来る車が、自車の右をすり抜けて(または2車線で右側の車線を)直進しようとしているのであれば、赤い車は来られないので、ぐずぐずせずにそのまま左折する必要がある。ときにこの判断は難しい。
赤い車の立場であっても、対向車がある程度微妙な距離まで近づいているときでも、必ず青い車が譲ってくれると確信して右折を開始するという決断をしなければならない。もし青い車が左折を開始すると、直進車を遮る位置で止まらなければならないかもしれないからだ。
しかし、信号機のある大きな交差点であれば、矢印信号などでコントロールされていることが多く、それに従えばよいのでこのルールは関係ない。逆に交通量の少ない交差点では、右折車と左折車が鉢合わせになることはあまりない。だから毎日運転していても、このルールが適用になることはそれほど多くはない。たまにだから、つい忘れていて、そのときになるとハッとするのだ。
もっと難しいのは、左の図の場合だ。T字路で右折して本道に出る車(赤)がいるときには、右折して脇道に入る車(青)の方が譲らなくてはならない。このルールは道路の脇のスーパーの駐車場などから出るときにも適用されることになっている。しかし、一方にGIVE WAYなどの標識があるときは標識がない方が優先だ。それから、右折で出る車も、当然、直進する他の車や二輪車、歩道上の歩行者は譲らなくてはならない。
直感的には、脇道から出てくる車よりも、直進する道路を走っている車の方が優先だろう。しかも、本道を走っている車が、交差する脇道や右側の駐車場の出口にGIVE WAYのサインがあるかどうかに注意するのは至難の業だ。もちろん普通はある。まれにないときにだけにこのルールが適用になるから怖いのだ。
そのせいか特にこちらの方のルールはあまり守られていないようにも見える。なおさら危険だ。
最近、日本の免許がある人は、実技試験も筆記試験もなしで、NZのフルライセンスに切り替えられるようになったので、このブログの読者でNZで運転をしている人でも、特に2番目の方は知らなかった人もいるのではないだろうか。
この二つの右折優先ルールは今年の3月25日の午前5時から変更され、他の国と同じように、左折が優先、本線から脇道に入る人が優先というように改められる。

Two of the give way rules are changing | NZ Transport Agency
こういう優先ルールの変更は周知徹底が肝心だ。しかもすべてのドライバーが一斉にルールを変えないと事故になる。変更後しばらくはあまり運転したくない気分だ。
政府は120万ドルをかけて周知徹底の広報をするという。「その日」まであと1か月近くになったのに、どうも広報を見ない。うちはテレビを見ないせいかと思ったら、そうではなく、直前の10日間に集中して広報をするのだそうだ。つまり変更日を間違えて、早くから新ルールで運転してしまう人が出るのを防ぐためらしい。
Give way rules about to change - National - NZ Herald News
以前沖縄であったように、右側通行がある日から左側通行になるようなドラスティックな変更であれば、皆とても気をつけると思うが、この右折優先ルールが適用になるのは、そう毎日経験するようなことではないのでとかく忘れやすい。自分が気をつけていても相手が間違えるかもしれないのだから、本当にやっかいだ。