NZの銀行はテキトウ?

前にも書いたように、今回は日本の家が売れたので、日本からNZにまとまったお金を動かした。そこで、対照的な経験をしたので書いておく。
最近は調べていないが、日本の銀行でオンラインだけで海外送金ができるところは今でもほとんどないだろう。ボクが口座を持っている某外資系銀行も、ほとんどの取引はオンラインでできるが、未登録の送金先への海外送金は支店に出向く必要がある。10年以上口座を持っているが、支店に行くのは口座開設以来初めてだ。
妻の実家に電車で向かう途中、乗換駅にある支店に出向いた。待つことなく担当者が現れて、要件を伝え、書類を記入した。その後担当者は奥に入ったまま、なかなか出てこない。
妻の実家の近所は電車の本数が極端に少ない。次の電車を逃すと次は1時間待ちである。焦っている頃、ようやく出てきた記入済み書類のコピーをよく見ずに受け取って、駅に走った。
2時間近く電車に揺られ、妻の実家に着くと、先ほどの銀行員から電話があった。サインをすべき書類が一つ不足していたとのこと。送金を依頼する書類にサインはしたが、その前に外貨両替をしたときのサインが必要なのだそうだ。オンラインで自分でやれば簡単なのだが、たまたま窓口でやってもらったのだ。
困ったことに、FAXでも速達でもダメで、どうしても今日の日付で直筆でないとダメなのだそうだ。今から支店まで来てくれと言われたなら、相手のミスなのでやなこったと言おうかと思っていると、なんと、担当者が電車に乗って2時間かかるここまでサインを取りに来ると言うのだ。
夕方になり、彼女は本当に電車に乗ってやってきた。駅からの公共交通手段はないので、さすがにこちらから最寄り駅まで出向いて、駅のベンチで書類にサインをした。(無人駅なのだ)
その往復の時間に本来やる仕事があるだろうに大丈夫かなあと少し心配になった。コンプライアンス重視も、少しやり過ぎな気もする。
サインが漏れていたのは、当局がマネーロンダリングを恐れる海外送金そのものではない。ただの外貨両替である。オンラインならばワンクリックだ。海外の観光地の両替所ならば計算書すら渡されないこともある。
しかし実は彼女は、高額の引き出しや海外送金に必要なはずのボクの身分証明書のチェックを最後までしていない。コンプライアンスとは不正な取引を防ぐことだろうか、それとも形式的に書類のチェックをパスすることだろうか。

さて、ニュージーランドである。

以前のブログでも銀行のテキトウさ加減については何回か書いたことがある。
チェッキングとセービングの間違い再び

資金を受け取った銀行は、ボクがホームローン口座を持っているK銀行ではなく、老舗のN銀行である。K銀行のように歴史のある大銀行でない金融機関は、海外からの送金を受け取るのに他の銀行を経由しなければならない。経由する他の銀行がいくら手数料を差し引くかは、事前には分からないので、K銀行を指定して送金するのは避けたのである。

N銀行への入金は確認できたので、次にK銀行へ国内送金する。NZでは国内の銀行間の送金に手数料はかからない。

N銀行ももちろんオンラインでほとんどの取引ができる。しかし送金を試みるとエラー。エラーメッセージは不親切で分からず、FAQにも書いていないが、おそらくデフォルトの上限金額をオーバーしているらしく受け付けてくれない。どうやらデフォルトの上限金額はたったの1000ドル(約6万円)らしい。

そこで問い合わせの番号に電話した。上限金額を引き上げても、オンラインで振り込めるのは10000ドルまでであるので、今回の送金は今この電話でやりますよ、とのことである。それは助かるが、その適当さ加減はちょっとコワイ。

  • 振込先の口座番号を復唱しない。
  • 振込先の口座名義を聞かない。
  • 本人確認は生年月日と所有する口座の種類等についての質問だけで、PIN入力やパスワードは求められない。

会社の同僚とか、普通に隣で聞こえているわけで、ちょっとこのオペレーションはまずいと思う。携帯電話に送られてくるセキュリティコードを入力しないと送金できないインターネットバンキングの送金上限が初期状態で1000ドルなのに、電話だとこんなに簡単に何万ドルがあっさり他人の口座に出金できてしまうというのは、どういうことだろう。

今回は幸い何の事故もなく、無事K銀行に入金され、ホームローンの一部返済に充当されたわけだが、何事も本質度外視で形式重視の日本と、柔軟というかテキトウなNZとの違いをあらためて考えさせられる経験であった。