なぜNZに移住したのか

よく聞かれる質問だが、これほど答えにくい質問もない。
まずは、相手がどの程度の答えを期待しているのか見極めなければならない。
単なるスモールトークであれば「まあ、リラックスしたライフスタイルですかね。トーキョーの生活はビジーですから。」ぐらいに適当に答えておけば、それ以上は相手も興味がないので、むしろまじめに答えないほうがよい。
一応ここではまじめに答えると、日本の状況が行き詰っていて、先が明るくないことを、当時公務員をやっていたこともあって痛感したというのが一番で、次には海外に住んだり仕事をしたことがなかったので、チャレンジしたかったという気持ちもあったからだ。
しかしこの説明は、そもそも「日本の状況が行き詰っている」ことが分からない人には通じない。日本人でなくても日本関係の政治経済のニュースをウォッチしている人は、ある程度わかっているけれども、そういう人は少ない。あまりニュースなどを見ない人は、いまだに日本はお金持ちの経済大国だというイメージを持っていることも多い。日本人でも、世代が離れている人や、海外生活が長い人とは、問題意識が共有できないことも多い。
そういう人に、日本がどう行き詰まっているのか説明して理解してもらうことは大変で、むしろ無理なので、ここでもあえてそれは述べない。
そうやって今まで面倒なことから逃げていたわけだが、いつか逃れられない日が来る。それは自分の子供にこの質問をされる日だ。いつか必ず来るその日に備えて、真摯でかつ容易な答を用意しておかなければなるまい。