日常会話と仕事の英語はどちらが難しいか

日本にいる人に話を聞くと、自分の英語力を「日常会話なら何とかできるが、英語で仕事をするのは難しい」と言う人がいる。
”日常会話レベルの英語ができる。 → 次のステップ:仕事で使う英語。”
だと思っているのであれば、ぼくはそうは思わない。日常会話のほうが、仕事で使う英語よりも格段に難しい。
ぼくらが仕事で使う英語というのは、ほとんど日本語で言いたいことを単語レベルで置き換えればそのまま言えるし、相手の言っていることも単語が分かればそのまま訳せば分かる。
(ビルドエラーがでるんですけど)と言いたければ、「I'm getting build errors.」と言うし、「Can you comment out that method?」と言われれば、(そのメソッドをコメントアウトして)と言っているんだな、と分かる。
それに対して、日常会話は難しい。
Hi, how's goin'? / I'm good. だけが日常会話だと思ったら、それは大間違いだ。彼らの「日常会話」はそれでは終わらない。その後に続くのは、昨日のスポーツの結果や週末に家にペンキを塗ったことなどが延々と続くのだ。
会話で使われる単語は多岐に渡るし、文化背景が異なり、話のバックグラウンドが分からないので、全然他人の話を聞いていても分からないのだ。単語の置き換えレベルの話ではない。
どのくらい文化背景が異なるのかの例をあげる。ニュージーランド人はクイズが好きだ。パブでは毎週クイズナイトがあるし、職場のイベントでも定番。ウチの職場でも、毎朝クイズ大会があり、朝刊に載っているクイズが何問解けたかを部門ごとに競っている。
たとえばこんなクイズだ。

  • Truth or Consequenceと呼ばれる町があるのはアメリカのどこの州か。
  • 1992年の「Bigger, Better, Faster, More!」は誰のデビューアルバムか。
  • 20歳以上の運転手の血液中アルコールの上限は。
  • Otago Daily Times紙は何年の創刊か。
  • Bee Geesには何人兄弟がいたか。
  • Maurice Gibbは2003年に何が原因で亡くなったか。

ぼくには質問に出てくる固有名詞すら分からないが、必ず誰か答えを言う。これが文化背景が違うということだ。子供の頃から見ているテレビもスポーツも聞いている音楽も違うわけで、その蓄積が違うのだ。子どものうちや若いうちならばともかく、大人になってからとても追いつけるものではないし、追いつこうとしてもキリがない。
だから日常会話を簡単に考えないほうがよい。1対1で対話しているのであれば自分の知っている話題に誘導すればよいが、複数人の会話の輪に入るのは至難の業だ。
それに比べたら、もともと自分の専門分野である仕事の話は、単語の訳さえ分かれば大丈夫。自分の専門で、相手が知らないこと、気づかなかったことを指摘できれば、尊敬もされる。
英語に自信がないから、海外で仕事が見つけられないと思っている人は、いわゆる「英会話」を習うよりも、自分の専門分野で使われる用語を英語で何というのかをよく調べて、使えるようにしておいたほうが良い。