空港に安く行く方法

空港というのはとかく何でも高い。
空港内の飲食店が高いのは、空港という閉鎖的な空間での独占価格であるし、家賃も高いであろうし、仕方がない。
空港への交通機関も高い。どこの空港でも空港バスや空港に乗り入れる鉄道などは、一般の路線に比べて割高である。
これも、空港会社へ払う費用が含まれているという点もあるだろうが、航空機に乗るような乗客はそれほど価格にシビアでないと思われている節もある。
しかし、どこの空港にも、旅行者が使う一般的なルートの他、地元の人や通勤の人が使う経済的なルートがあったりすることが多い。時間があるときは、そういうものを探すのも楽しい。
ロンドン・ヒースロー空港ではいつも地下鉄ピカデリーラインを使う。昔はそれしかなかったが、今はパディントン駅に直行する特急列車がある。でも高い。地下鉄は時間はかかるし、荷物を運ぶのは不便だし、よく止まる。しかし安い。
今もあるかどうか分からないけれど、10年以上前にニューヨークのケネディ空港で降りたとき、近くの地下鉄の駅まで乗せてくれる無料バスがあった。ニューヨークの地下鉄はどんなに長く乗っても均一運賃なので、これはとてもお得だった。
香港国際空港も市内と空港を結ぶ高速列車がターミナルに乗り入れているが、一般の路線バスで近くの東湧という町まで行くと、普通の地下鉄に乗れる。運賃は倍くらい違ったように記憶している。
日本の大阪伊丹空港では、モノレールができる前、阪急の蛍池駅まで10分くらいかけて歩いたことがある。
成田空港の空港バスであるリムジンバスも2900円とは、東関東自動車道の終点の潮来ICまで走る高速バスがわずか1780円であることを考えると、ずいぶんと足元を見た価格設定だ。リムジンバスや成田エクスプレス、京成スカイライナーよりも安いのは、特急料金のいらないJRの快速や京成の「特急」というのはよく知られていると思う。京成の場合は新しくできた「スカイアクセス」経由だと1200円、時間のかかる旧線回りだと1000円で上野まで行ける。時間があれば、成田空港の敷地内にある「東成田」駅まで、第2ターミナルから500メートル、第1ターミナルから750メートル歩けば、さらに70円安くなる。

さて、前振りはこのくらいにして、ニュージーランドの話をしよう。

オークランド

鉄道は乗り入れていない。ニュージーランドには鉄道が乗り入れている空港はない。一般的なルートはAirbus Expressという空港バスで市内まで約45分、片道16ドルである。3か月有効の往復乗車券がある。バスや鉄道の一日乗車券などは一切使えない。

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ほとんど知られていないが、オルタナティブな方法としては、空港に唯一乗り入れている一般の路線バスである380番のバスに乗り、Papatoetoe駅で鉄道に乗り換えるという手がある。以前はこのバスは平日のみで1時間に1本しかなかったが、最近では休日も30分に1本になり、バスの車体にも大きく、Papatoetoeで鉄道に乗り換えられる旨のイラストが掲示されるようになった。しかし、オークランドの交通案内サイトMAXXで検索しても、この経路が出ることはない。
しかも、Papatoetoe駅での乗り換えは全く保証されない。目の前で列車が行ってしまうこともある。バスの所要時間は約20分で$3.40、列車は約30分で$5.10である。運がよければ、Airbusとあまり変わらない所要時間で、費用は半額近くになる。
Airbusを除くバス・フェリー・鉄道が一日乗り放題になるDiscovery Pass($14.50)も、この路線で使える。ただし空港では売っていない。バスの運転手から買えることになっているが、バスに搭載されている発券機の機種によっては、発行することができない。そのときはあきらめるしかない。

クライストチャーチ


クライストチャーチには特に空港専用バスというのはなく、公共交通機関は一般の路線バスしかない。3番、10番、29番のどれに乗っても途中の経由が違うだけで、市中心を通る。
これ以上経済的な方法はないと思うとまだ甘い。実は地元の人と旅行者では運賃が3倍以上も違うのだ。

クライストチャーチのバス運賃はゾーン制だが、空港の前を横切るRussley Roadという通りが料金の境目になっていて、現金で払った場合これより市内側では$3.20、空港から乗ると$7.50になる。
ところがプリペイドのIC乗車券(Metrocard)を持っている地元の人は、空港でも市内料金と同じで、しかも$2.30しか引かれない。
Metrocardは空港では入手できない。郵送でも入手できるが、クライストチャーチ近郊にしか送付してくれない。
そこで少しでも安く空港から市内に行きたい旅行者は次のいずれかの方法が考えられる。

  • クライストチャーチ在住の誰かからあらかじめMetrocardを入手する。
  • Russley Roadの向こうまで歩く。

ウェリントン

最後にぼくの住むウェリントンについて。
ウェリントン空港に乗り入れているバスは91番のAirport Flyerという特別な路線だけだ。ターミナルのすぐ前から15分おきに出発する。所要時間はおよそ30分。市内への最短コースは通らず、空港の南の滑走路の先の方をぐるっと迂回し、他の路線バスが通らない地域の住民を拾うローカルなバスとしても機能している。運賃が割高なのに、特に都心に直行する急行バスというわけではなく、損した気分だ。
ウェリントンのバス・鉄道の運賃はゾーン制で空港はZone3に含まれるので、本来は$4.50のはずなのだが、Airport Flyerは特別運賃で$8.50と倍近い。
この路線を走るバスは、荷物を置くスペースがあったり、GPSで現在の位置が表示されるモニターがついていたり、Wifiが使えたりする専用の車両が割り当てられる。(普通のバスのときもある。)とはいえ、やはり足元を見た価格設定という感は否めない。
それで、このバスよりも安い公共交通機関はないかというと、やはりある。

路線図をよく見ると、空港ターミナルには乗り入れていないが、かなり近くまで来ている11番という路線がある。

このバス停まで約700m歩けば、市内までの運賃は$4.50となる。11番のバスは日中は1時間に4本。休日は少ない。Wellington Stationまでの所要時間は42分。