海外在住のまま不動産登記の住所変更をした

日本で住んでいた家が売れずにそのまま持っている。地理的にも不便なところで、将来自分達が住む可能性はない。先日賃借人が退去したので、一時帰国のついでに売りに出すための手続き等(不動産屋やリフォーム屋との打ち合わせなど)を片づけることにした。
まだ売れたわけではないが、もし売れたら所有権移転の登記をしなければならない。登記をするときには売り主は印鑑証明が必要で、その印鑑証明の住所氏名が所有者として登記されている人物の住所氏名と一致していなければならないのが大原則だ。*1
一致していなければ、所有権移転登記の前に、所有者の住所変更の登記をしなければならない。
こんなことは、売れたときに、所有権移転登記といっしょに司法書士に全部お任せするのが普通だろうが、司法書士代をけちって、まだ売れていないうちに自分で住所変更の登記をしておくことにした。
前にも売ろうとしたときに住所変更登記をやったことがあるので、やり方はだいたい分かる。
日本に住んでいる日本人は住民登録制度がある。住民票には前住所が書いてあるので、1回しか異動していなければ、それを証明として住所変更の登記は簡単にできる。2回以上異動している人は、前に住んでいた市町村役場で住民票の除票というのを取ると、以前住んでいたところの証明ができる。
複数の異動があってそれぞれの除票を取るのが面倒な場合は、戸籍がおかれている市町村役場に行って、戸籍の附票というのを取ると、住民登録の異動が全部記載されているので、これも証明になる。
海外の場合は住民登録制度がない。管轄する大使館か総領事館に行って、在留証明というのを出してもらうことができる。大使館等では、銀行のステートメントや公共料金の請求書、住居の賃貸や売買契約書などの証拠書類を元に、住所を証明してくれる。ちなみに「在留届」は住民登録とは異なり、住所の証明としては全く役に立たない。
不動産登記の場合には、住所が全部つながっていなければならないので、やっかいだ。
たとえば、日本の最後の住所地に転出届を出したときに、「ニュージーランド国オークランド市に転出」(細かい住所はいらない)と書いたのに、現在はオークランドから転居してウェリントンに住んでいるような場合だ。
在留証明は過去に住んでいたところも証明してくれる。これも過去の賃貸契約書などをもとに、平成(!)何年何月から何年何月までどこに住んでいたと証明してくれる。
今回のぼくの場合、以前住んでいたところの証明は困難かと思われたが、幸い前の大家からのリファレンスレターなどがあったので、過去の住所なども含めて在留証明を取るところまではクリアした。
ここまでできれば、後は難しくないだろうと思われた。
登記書類を作って申請料の印紙を貼って、登記所のそばの、本籍が置きっぱなしになっている市役所に寄って、戸籍の附票を請求したところ、
ニュージーランド国
としか書いていない。
あれ、過去の経緯は載らないのですか、と聞いたところ、
市町村合併以前の戸籍は廃棄しました。
とのこと。これでは登記されている住所地からの変更を証明できない。
急いで国外転出届けを出した区役所まで住民票の除票を取りに行き、事なきを得た。除票も保存期間は5年なので、あぶないところだった。*2
戸籍の附票も住民票の除票も、どこの市町村役場でも郵送で取れることになっているが、手数料を支払う手段がないので、事実上海外からは取ることができない。また、最近はプライバシーの保護が厳しく、住民票記載の住所地にしか送らないといわれることも多い。住民票記載の住所地が「ニュージーランド国」の人は、たとえ国内からでも郵送で取るのはちょっとやっかいだ。
なるべく直接行って、パスポートなどの身分証明を見せて取得するのが簡単だ。どうしても郵送で取らなければならないときには、事前に電話などして事情を相談してからのほうがよいと思う。
もう一つ注意すべき点としては、在留証明の書式では「 年 月」としか書かれていないが、登記のときには「日」が必ず必要なので、ちゃんと「日」をつけたものを証明してもらうことだ。大使館の人はこちらが書いたとおりにしか証明してくれない。
ちなみに登記所など日本の役所の多くでは横文字の住所は受け付けないので、在留証明は「ニュージーランド国ウェリントン市ウィリスストリート100番地」のような、おおよそ実用的には何の役にも立たない、Google Mapを日本語版で見たときのような、ちょっと気持ち悪い表記で記載される。

*1:日本に住民登録がない海外在住の日本人は印鑑証明は取れないが、代わりに大使館か総領事館で署名証明というのが取れる。

*2:プロフィールにあるように移住したのは2006年なので