入りやすく出にくい(住宅ローン その3)

前回前々回は2008年に初めて住宅ローンを借りたときの話だった。

せっかくお金を貸してくれた黄色いAという銀行だが、移住以来お世話になっている緑のKという銀行に比べて、使い勝手が悪い。

まず口座管理手数料を月に12ドル取られる。普通にセービングの口座ではステートメントの郵送を止めるなどして、この管理手数料を免除してもらう方法があるらしいが、住宅ローン口座ではその選択肢はない。

インターネットで公共料金等を支払うことができるが、支払先の登録に1件2ドルかかる。そんなものを取られるとは気がつかず、最初はうっかりいくつか登録してしまった。もちろんK銀行はそのようなチャージはない。ぼくのように2ドルを払いたくない人は、支払日が近くなったら、自分のK銀行の口座に送金してから支払うか、郵便局の窓口の請求書を持っていって支払わなければならない。

インターネットで一日一定額以上の送金をするには、あらかじめコードを送ってもらって、そのコードを入力しないと送金できない。これはあらかじめ電話で手続きしなければならないし、そのコードを送るにも少額だがお金がかかる。そして一定額というのがたったの500ドル(3万円)。もちろん他銀行の自分の口座に資金移動するときにも必要だ。こういう少額の手数料を払うことを嫌うぼくにとっては、500ドル以上はインターネットで送金できないと言われているのと同じだ。とても不便。

銀行はビジネスだから、手数料を取るのは当然だ。また、少額の預金しかない顧客ならば、維持費を徴収するのは妥当だろう。しかし、何万ドルも金利を払っている住宅ローンの客にはこのような少額の手数料は免除するなどして、大切にしているポーズくらいは見せてほしい。そうでなければ、客としては他の銀行に心が移ってしまうのも当然だ。

別にAが悪い銀行だとは思わない。しかしその辺のビジネスのやり方がうまくない。

K銀行は、他行からの住宅ローン借換の場合には、ローン諸費用は無料、登記費用も銀行で持ちますというキャンペーンをやっている。また6年間他の主要銀行よりも安い金利を保証しますと言っている。住宅ローンの顧客には口座手数料はかからないことも確認済みだ。

最初にK銀行でローンを却下されたのは、前年の収入が低かったからで、今ならば過去2年度の決算書類もIRDの課税通知も十分な金額が記載されたものが提出できる。これまでの収入もすべてK銀行に振り込んでもらって受け取っている。

A銀行を紹介してくれたブローカー氏に、K銀行に替えたいのだけれどと相談したところ、「何百ドルも手数料がかかるから、そんなわずかな手数料の差では割に合わない」ということであった。

Fixed Term(固定金利)のローンを期間内に解約するのであれば、多額の違約金が取られるのはわかる。しかしVariable(変動)なのになぜ解約手数料がかかるのか聞いたところ、security(抵当権)の解除のためにDischarge Feeがかかるということであった。

自分でA銀行のWebサイトで確認したところ、Discharge feeはわずか100ドル。乗り換えれば口座管理用の月12ドルが浮くわけだから、金利が安くなるのを考えなくても、8か月足らずで回収できる。これはブローカー氏には黙ってK銀行に乗り換えた方が良さそうだ。

K銀行のインターネットバンキングから住宅ローン申し込みページを開くと、銀行が把握している、住所や家族や預金残高、クレジットカードの限度額や残高などは、もう記入済みで、後は住宅の時価やその他の財産、収入などを記入するだけで、申し込みが完了した。

2日後に担当者から電話があり、IDや収入証明などを送るように指示があった。もうどんな書類を送ればよいかわかっているので準備は早い。帰宅して直ちにFAX。翌日にローン承認のレターがメールに添付されてきた。

今週からめでたくK銀行一本に統一。毎月資金を移動したり、請求書の支払日に郵便局に行ったりという手間もなし。大きな金額でもすぐに支払える。おまけにゴールドクレジットカードまで会費無料で入れる特典つき。ぼくはけっこう満足している。

A銀行からチャージされたのは本当に100ドルだけだった。ちなみにK銀行をやめて他に乗り換えるとしたらいくら取られるのかK銀行のWebサイトで調べたところ、Discharge of security feeは100ドルで同じなのだけれど、それ以外にEarly exit feeというのがあって、最初の貸し出しから3年以内に、3年以上支払期間が残っているローンを、他行への借換で返済した場合に250ドルかかることになっている。

なるほど。入りやすく出にくい。これがビジネスというものなのでしょうね。