何か不公平

タスマン海を挟み2250kmの距離を隔てて隣接しているオーストラリアとニュージーランドは共に長い間英国連邦の一員として共通の発展を遂げてきた。現在では非ヨーロッパ系の移民も多く受け入れているとはいえ、依然として英国からの移民とその子孫が人口の大半を占めるという点も共通している。法制度や文化的背景は共に英国から引き継いだものが多く、共通点が多い。

それぞれ人口は約2000万、400万ということで決して人口の大きな国ではなく、外交上の緊張関係もないため、それぞれ独立国でありながら、国境の垣根が低く、事実上の共通市場とみなされている。

実際、生活に身近な小売チェーン店の多くはオーストラリアから来たものであるし、*1主要銀行はすべてオーストラリア資本。*2

人の移動も自由であり、ヨーロッパと違って国境の審査はあるけれども、それぞれのパスポートで相手の国に、滞在期間の制限なしで入国でき、働くこともできる。

具体的には、オーストラリアのパスポートまたは永住権保持者は、ニュージーランド入国時にニュージーランドのレジデンス・パミット(永住権)が自動的に与えられる。つまり期限なく滞在し、自由に働けるほか、教育・医療なども無料または格安になる。(永住権があると何がいいのか)一方、ニュージーランドのパスポートを持っている人は、オーストラリアでレジデンス・パミットが出る。

あれ。ニュージーランドの永住権保持者は?

普通イミグレーションに関する条約は相互にフェアな互恵条約だと思うのだ。日本国籍の人はビザがなくてもニュージーランド入国時に3か月のビジターパミットが出るのと同じように、ニュージーランドのパスポートで日本に入国すると、90日の上陸許可が出る。(二重国籍の子どもが日本に入国するとき

ワーキングホリデービザも相手の国で(ほぼ)同じ条件で受け入れてくれる国と相互に条約を結んで実施しているはずだ。だから国によって期間が1年だったり3年だったり、同じところで働いてよい期間も3か月だったり、制限がなかったりとややこしい。

もちろんいつも同じ条件というわけではない。中国は日本人に対して15日以内ならばビザを免除しているがこれは一方的なもので、逆は同じというわけにはいかないだろう。(7月から大幅に緩和されるそうだが。)アメリカの電子渡航認証システムESTAやオーストラリアのETAも一方的に課しているものだ。

オーストラリアの永住権保持者に対して自動的にニュージーランドの永住権が与えられるというのも、ニュージーランド政府が一方的にやっていることらしい。なぜ対等でないのかは、よく分からない。

なお、ニュージーランドの永住権を取って一定年数を経過すると、原則としてニュージーランド国籍を取ることはできる。この方法で、ニュージーランドを踏み台にして、オーストラリアの永住権をとる人がいるそうだ。

*1:NZのチェーン店もあるが、それらはオーストラリアには進出してない。

*2:その反動として国が出資してKiwibankが作られた。最近の報道によると、また売ってしまうらしいけれど。