海外で仕事していれば英語はペラペラなのか?

海外で仕事をするのに必要な英語力について、ここでも経験者の話をしてみたい。

ウェリントンの某銀行本社でWeb開発の仕事をするようになってから約1年半になる。その前はオークランドの日本人の会社にいて、接する相手もほとんど日本人だった。

今の職場は海外出身の人はたくさんいるが、日本人は全くいない。あたりまえだけれどみんな英語だ。

ぼくは日本では英語は得意な方だったと思う。TOEICを受けたときもIELTSを受けたときも、1回受けた後試験対策すれば、ちゃんと点数が伸びてそれなりに満足いく点数が取れた。でも短期の語学研修や海外旅行を除いて、海外に住んだことはなかったので、英語で会話をする機会というのはほとんどなかった。きっと海外で英語オンリーの環境になれば、話せるようになるだろうと思っていた。

しかし、それは甘かった。

もちろん自分のやっている仕事について何か聞かれたときには、さすがに分かる。答えることもできる。説明しにくいときにはコードや画面を見せながら説明すれば、たいてい同じ仕事をしている同僚ならば分かる。エンジニアでないノンITの人に説明するのはちょっと大変なときもあるが、自分の作っているものの説明はがんばってするし、聞かなければならないことは何とか伝える。

しかし、いまだに同僚がおしゃべりをしているのは、何を言っているのか、さっぱり分からない。一生懸命聞いて、だいたい何について話しているかが分かるくらいで、笑っていても、どういう面白いことを言ったのか、全然分からない。会議に出ても、皆が早口でしゃべっていることはほとんど分からない。どうせ分からないので、自分に関係ありそうなこと以外はスルーしている。

いずれ慣れるだろうと自分を慰めていたが、もう1年半。大して進歩したような気がしないのはどういうわけだろう。

試みに帰りの電車で、今日何か新しい単語か表現を覚えたかどうか、思い出してみた。一つか二つあったような気がするが思い出せない。書いてあるものの意味が分からないときには電子辞書を引くので履歴が残る。だから帰りの電車で復習することもできる。しかし、会話でなるほどこういう言い方があるのかと感心したことは、それっきりだ。同じ表現が繰り返し出てこないと、なかなか覚えられるものではない。

考えてみると試験勉強をするときには、単語暗記用のソフトウェアで反復繰り返したり、模擬問題で分からない言葉があったらノートに書いて、見直したりしていた。ただ漫然と会社に行って、同僚の言うことがわからないなぁと漠然と思っているだけでは、いつまでたっても分かるようにはならないということだ。

海外旅行から帰ってきたばかりの同僚が、日本語のあいさつを教えてくれと言ってきた。そのうち日本にも旅行に行くかもしれないし、いろいろな言葉であいさつや数字など簡単なことは言えるようになりたいんだ、ということだった。彼は熱心にメモを取り、さっそく帰り際に「サヨナラ」と言って去っていった。

これは暗に、君もメモを取ったりして英語をもっと覚えろよ、と言われているような気がした。いや、いくらなんでも彼の日本語より、こちらの英語の方がはるかにできるわけで、そんなことを言われるいわれる筋合いはないし、本当にそんなことは思っていないと思うけれど、そう思うことにして自分にプレッシャーをかけることにした。

だからこれからは、ちょっと恥ずかしくても、「今何て言ったの?」「スペルは?」と聞くことにしようと思う。少なくとも彼には。