NZで歯の矯正をする

かつて眼鏡と出っ歯は日本人の特徴のように描かれたこともあったそうだが、やはり白人に歯並びの悪い人は少ない。子供の歯並びが悪いと、ちゃんと親が矯正歯科に連れていくのが、中産階級以上の欧米人には一般的と聞いていたが、どうも本当にそうらしい。

自分も日本人らしく眼鏡と出っ歯だったが、近眼は日本を出る前に、価格競争で安くなったレーシックで直してきたのでもう眼鏡はしていない。残るは出っ歯だ。そういうわけで中産階級以上の西洋人には出っ歯はいないので、西洋人の社会で暮らすには直した方がよいのではないかと思うようになった。

これもレーシックと同じように金をかければ直る。でも矯正具をずっとし続けるには根性もいる。子供の頃、歯科矯正をするように再三親に勧められたが、あの醜い矯正具がイヤで断っていた。それから時間がかかる。1-2年も同じ歯科に通うからその間に引っ越しの可能性があるときにはできない。

昨年の8月にウェリントンで定職に就き、これで当分ウェリントンに定住することは確実になった。収入にも余裕がある。長年気になっていた歯科矯正についてネットで調べたところ、職場の近くに矯正歯科がある。通うのにも都合がよいし、ウェブでの説明も丁寧で納得がいったので、電話してアポイントを取ることにした。

歯の矯正のことを英語でorthodonticsという。歯医者といえばdentisitだが、dentisitとorthodontistは違う。初めて訪問して聞かれたことの中に、かかりつけの歯医者は、というのがあった。引っ越して間もないのでかかりつけの歯医者はいない。というか歯は悪くない。もう5-6年以上歯医者に行ったことがない。その頃は日本に住んでいて、そのときの歯医者は日本だ。と説明した。

ちなみにそのときの歯医者は矯正歯科の看板も掲げていて、しきりに矯正を勧められた。そのときは金と時間に余裕がなかったので断ったが、かみ合わせが悪いと、年を取ったときに歯が悪くなるのが早くなると言われて気にはなっていたのだ。

でウェリントンの歯科矯正のお値段はというと、まず初回のコンサルテーションが90ドル。それから検査が300ドル。検査をしてもらってから2週間くらいで見積が送られてきた。クリアスマイル(商標)という外から分からない透明の矯正具を使ったもので8800ドル、従来型の金属のものであれば6000ドル(どちらも上下)、ということであった。

そのときちょうど例のリーマンショックで急激に円高が進行していて、前月まで80円超だったNZドルが60円前後にまで下がって安定していたので、日本のクレジットカードで支払った。一括払いだと10%引きだというので迷わず一括払いにしてもらった。(貯金の習慣がないこちらの人は分割払いが一般的らしい。もっともその後また一段と円高が進み、今ではずっと50円を上回ることがないレートが続いている。こればかりはどうにも予測ができないから仕方がない。)

それにしても50万円以下というのは安いと思った。日本で見積を取ったことはないが、100万円以上はするのではないだろうか。

この透明の歯科矯正具は日本ではあまり一般的ではないらしく日本語でググっても情報を見つけることができなかった。オーストラリアの会社が開発している。
http://www.clearsmile.biz/

だからウェリントンで歯形を取って、オーストラリアに送る。オーストラリアでそれを元に、歯にかぶせる透明なプラスチックカバーのようなものを作って送ってくれる。これをウェリントンの矯正歯科で受け取るという仕組みだ。矯正前の歯にぴったりはまるものから、理想的な形になるまで少しずつずらしたものが自分の場合24個作られる。これを2週間ごとに自分で変えていくというわけだ。4個ずつがセットになっているので、歯科を訪問するのは、これを受け取りに行くときだけでよい。そのときに進捗状況などをチェックしてくれる。

この透明な矯正具は、確かにすごい。周囲の誰も歯科矯正をしていることは気がつかない。飲食をするときだけは外さなければならないので、外出先で茶菓子などを勧められたときはちょっと困る。お手洗いを借りて外してこなければならない。パーティの時には付けてはいられない。長い時間外していると、せっかく矯正したものが少し元に戻ってしまうらしく、再び装着するときにちょっと痛い。

それでも食事の時以外24時間、歯にプラスチックカバーを付けた生活というのにも慣れてきて、今はのべ6個目のやつを付けているところだ。明らかに始める前に比べて、歯は動いている。見積ではだいたい18か月かかるということなので、終わるのは来年になりそうだ。