ウェリントンは地震で警戒中

金曜の午前中に有感地震があった。その後も小さい地震が続き、日曜の夕方にでかいのが来た。マグニチュードは6.5で、北島と南島の間ここからは50KMくらい南西の海中が震源だ。僕の感じでは日本の震度で4くらいだろうと思った。町では商品が棚から落ちているようなので、震度5弱くらいのところもあったのかもしれない。ウェリントンのCBDは僕が住んでいるところよりも震源に近いし、歴史的にもと海だったところの上にできた土地なので、揺れが大きいのだろう。

今日(月曜)は昨日の地震の安全確認で電車が運休という情報まではベッドの中でわかったので、急いで起きて並行する路線バスに飛び乗った。電車が全部運休では当然混雑して遅れているだろと予想されたが、なぜか車内も道路もガラガラ。むしろ早く着いた。街を歩く人も休日なみにまばら。会社のビルに着くと、ビルが閉鎖されていて入れない。同僚にテキスト(SMS)で聞いたところ、最低でも午前中はビルが開かないと会社のメールで連絡があったとのこと。僕は自宅勤務の許可を取っていないので、自宅で会社のメールが見られないのだ。

仕方がないので妻に迎えに来てもらうのを待つ間、ネットでニュースを見ると、市や災害対策本部の指示により、ウェリントンの企業の多くは従業員の自宅待機を実施しているとのこと。

あらためて町を歩いてみると、休業中の張り紙ばかりで、ウチのビルのように立入禁止にしているビルも少なくない。やっているのはカフェばかりだ。銀行の支店も休業だ。

報道を見る限り、今のところ実質的な被害は軽微だ。市内の数カ所で壁やガラスが路上に落下したところがあり、通行止めになっているのと、室内でケガをした人が数人いる程度のようだ。

昼の時点で、市長を始め公的機関は、ウェリントン市内に来ないようにアナウンスしている。電車もいつ走り出すのか未だにわからない。この様子では今日は一日自宅待機になりそうだ。

どちらが正しいとは言えないが、日本の感覚では、まだ大した被害も出ていないうちから随分とオーバーな気がする。2年前のクライストチャーチの経験から、当局も慎重になっているのだろうが、東京で震度4の地震があるたびにこんなことをしていたら、日本経済がマヒしてしまうのではないだろうか。

一時帰国のお得な両替方法は

うちは日本で住んでいた家を人に貸していて家賃収入があったので、以前は一時帰国のときに日本円を買うということはしたことがなかった。NZに住んではや7年。その間には1NZドルが97円になったこともあるし50円になったこともあるが、なにしろ自分が両替をする必要がなかったので、あまり両替のレートで煩わされることはなかった。
しかし、以前の記事を読んでくださっている方はご存知のとおり、賃借人が退去して家は売却したので、日本円の定期収入はなくなり、多少は残してはおいた日本の口座の残高もさびしくなってきたため、買い物や一時帰国のためにとうとう日本にお金を送る方法を考える必要が出てきた。
NZで得たNZドルの収入を日本の日本円の口座に両替・入金する方法はいくつか考えられる。レートがよくて手数料(両替手数料・送金手数料)の安いところはどこなのだろうか。

為替レート(仲値)というのは刻一刻と変化し、この先上がるか下がるか、いつ両替するのがよいのかというのは誰にも分からないが、少なくとも同時点で比較してNZ$/円の数字が大きい金融機関で両替するのが有利である。1ドルのレートが1円高いところで両替すれば、それ以外の手数料等が同じならば1000ドル当たり1000円多く受け取れることになる。

NZの銀行でNZドルを円に両替して国際送金してもらう。

執筆時点でANZのT/T(電信送金)レート(Bank Sell)は73.49、Kiwibankは73.33である。現金に両替しない限り、両替してもらったところで必ず送金もしてもらわなければならない。国際送金の手数料は、窓口とインターネットで異なるが、インターネットで頼むとANZは18ドル。Kiwibankで20ドル。これ以外に中継銀行で手数料を徴収されることがある旨の注記があるが、日本で外国為替を取り扱う主要銀行に日本円を送金するときに、中継銀行を経由することはないだろう。個人的にこの方法で表記以外の手数料を取られた経験はない。

NZの銀行からNZドルのまま日本の銀行の外貨預金口座に送金し、日本の銀行で両替してもらう。

伝統的な邦銀ではあまりNZドルのレートはよくない(執筆時点で東京三菱銀行のTTBが72.92)が、日本は何かと競争が激しいのでたとえば新生銀行のように(執筆時点で74.40)という魅力的なレートを提供しているところもある。日本の銀行は(NZと異なり)海外送金を受け取るときに手数料を取ることはまずないよう*1なので、この方法は魅力的なように見える。しかし、中継銀行で手数料を徴収されることがあり、それがいくらかかるのか実際に送金してみないと分からない。以前かなりの金額を取られて多少のレートの差では割に合わなかったことがある。一度中間手数料を取られない銀行を見つければベストな方法かもしれないが、それまではリスクが大きい方法ではある。

FXの会社の送金サービスを利用する。

為替レートをインターネットで(英語で)検索するとオンライン為替トレードの会社がよく上位に出てくると思う。ここでは紹介しないが、それらの会社のサービスをよく読むと、国際送金を有利なレートで取り扱うことを売りにしているものがいくつかある。(主にアメリカやその系列のオーストラリアの会社だ。)見積を取るために、いくつか口座を開設したことがあるが、金額が小さい(1万ドル以下など)ときには意外とレートや手数料が銀行に比べて有利でなく、利用したことはない。

ここまで調べて意外なことに気づく。日本の銀行店頭の為替レートの表示などでは、

外貨現金買 > 外貨T/T買 > (仲値)> 外貨T/T売 > 外貨現金売

という表を見慣れていると思う。コンピュータ上で計算するだけの両替に比べて、キャッシュの両替は金融機関の輸送・保管コストがかかるため、売/買ともに顧客の負担が大きくなることは納得できる。
ところがニュージーランドではそうではないのだ。ちょっと気づきにくいがニュージーランドの銀行では、

外貨現金買 > 外貨T/T買 > (仲値)> 外貨現金売 > 外貨T/T売

なのだ。
執筆時点でのANZは、

Bank Buys(TT) 76.54、Bank Buys(Cash) 79.18
Bank Sells(TT) 73.49、Bank Sells(Cash) 73.60

同じくKiwibankは、

Bank Sells(TT)73.33 Bank Sells(Cash) 74.08

とうことで、外貨(ここでは日本円)を買うときにはなんと電信送金よりもキャッシュのほうがレートがよいことになる。(外貨をNZドルに両替するときには日本同様、キャッシュのほうが不利。)ちなみに同時点での東京三菱銀行は

CASH S. 83.62、TTS 76.92、TTB 72.92、Cash B 66.22

となっている。
なぜそうなっているのかは知らない。想像だが、たぶんNZは外貨キャッシュを持ち出す観光客よりも、外貨キャッシュを持ち込む観光客のほうが多いので、外国の金融機関から取り寄せなくても国内に外貨キャッシュが余っているのではないだろうか。*2

現金の両替にはレートの利ざや以外にコミッション(両替手数料)がかかる。銀行によって異なるが1%や1.2%などで、小額の場合にはミニマムチャージが適用になり7ドルか12ドル程度かかる。

現金は自分が帰国するときに腹巻の中にでも入れておいて、成田なり関西空港なりに着いたら空港にあるATMで日本の銀行の口座に入金すれば、送金のコストはかからない。

送金の手数料は送金する金額にかかわらず定額というのが普通だが、両替のコミッションは、ミニマムチャージを超えると%でかかるので、両替する金額が大きいとかなりの金額になる。キャンペーンや口座保持者の優遇措置などがないかどうかよくチェックした方がよい。両替のコミッションが免除にならない限り、金額が大きいときにはやはり電信送金した方がトータルでは有利だろう。

*1:東京三菱とかは取るそうです。新生は取られない。

*2:それなら日本では逆に外貨買取(の利ざや)はもっと安くてもよいと思うが、そこはまあ日本はいろいろ市場原理が機能しない国なので。

Give way ルールが変わります

ニュージーランドの交通ルールには右折優先というのがあって、慣れないうちはもちろん、慣れてもちょっと難しい。
移住したばかりの頃にこんな記事を書いたことがある。続:NZ移住Blog:右折優先の不合理
図はどちらも赤い車(実線)が青い車(破線)に優先する(Give way)とされている。青い車は赤い車が行くまで待っていなければならない。赤い車は躊躇したり、不必要に譲ったり、お見合いになったりせずに、円滑にさっさと進まなければならない。

右の図のように、青い車が左折しようとするときに、反対側から右折しようとする車(赤)が来たら、赤い車が右折するまで待つということになる。
70年代に導入されたときには、右折する車がいつまでも交差点の中にとどまっていることを防ぐために作られた、画期的かつ革新的な交通ルールだったのだろう。ニュージーランドは国の規模が小さく、よく世界に先駆けた画期的な制度が導入されることがある。実験国家と言われるゆえんだ。古くは婦人参政権、付加価値税(消費税)や電波オークションの導入も早かった。EFTPOS(デビットカード)の導入・普及だって早かった。
しかし、右折優先ルールは革新的すぎたか、他の国がついてこなかった。オーストラリアの一部の州でも導入されていたが、90年代に廃止されている。
運転してみるとわかるが、現実はこの図のように単純ではない。
まず、左折するときに反対側から来る車の方向指示器を確認することは、難しいことがあり、直感的にも見落としやすい。特に複数車線の広い道路の場合にはなおさらだ。
さらに、当たり前だが右折車よりも直進車の方が優先だ。右の図の青い車は、後ろから来る車が、自車の右をすり抜けて(または2車線で右側の車線を)直進しようとしているのであれば、赤い車は来られないので、ぐずぐずせずにそのまま左折する必要がある。ときにこの判断は難しい。
赤い車の立場であっても、対向車がある程度微妙な距離まで近づいているときでも、必ず青い車が譲ってくれると確信して右折を開始するという決断をしなければならない。もし青い車が左折を開始すると、直進車を遮る位置で止まらなければならないかもしれないからだ。
しかし、信号機のある大きな交差点であれば、矢印信号などでコントロールされていることが多く、それに従えばよいのでこのルールは関係ない。逆に交通量の少ない交差点では、右折車と左折車が鉢合わせになることはあまりない。だから毎日運転していても、このルールが適用になることはそれほど多くはない。たまにだから、つい忘れていて、そのときになるとハッとするのだ。
もっと難しいのは、左の図の場合だ。T字路で右折して本道に出る車(赤)がいるときには、右折して脇道に入る車(青)の方が譲らなくてはならない。このルールは道路の脇のスーパーの駐車場などから出るときにも適用されることになっている。しかし、一方にGIVE WAYなどの標識があるときは標識がない方が優先だ。それから、右折で出る車も、当然、直進する他の車や二輪車、歩道上の歩行者は譲らなくてはならない。
直感的には、脇道から出てくる車よりも、直進する道路を走っている車の方が優先だろう。しかも、本道を走っている車が、交差する脇道や右側の駐車場の出口にGIVE WAYのサインがあるかどうかに注意するのは至難の業だ。もちろん普通はある。まれにないときにだけにこのルールが適用になるから怖いのだ。
そのせいか特にこちらの方のルールはあまり守られていないようにも見える。なおさら危険だ。
最近、日本の免許がある人は、実技試験も筆記試験もなしで、NZのフルライセンスに切り替えられるようになったので、このブログの読者でNZで運転をしている人でも、特に2番目の方は知らなかった人もいるのではないだろうか。
この二つの右折優先ルールは今年の3月25日の午前5時から変更され、他の国と同じように、左折が優先、本線から脇道に入る人が優先というように改められる。

Two of the give way rules are changing | NZ Transport Agency
こういう優先ルールの変更は周知徹底が肝心だ。しかもすべてのドライバーが一斉にルールを変えないと事故になる。変更後しばらくはあまり運転したくない気分だ。
政府は120万ドルをかけて周知徹底の広報をするという。「その日」まであと1か月近くになったのに、どうも広報を見ない。うちはテレビを見ないせいかと思ったら、そうではなく、直前の10日間に集中して広報をするのだそうだ。つまり変更日を間違えて、早くから新ルールで運転してしまう人が出るのを防ぐためらしい。
Give way rules about to change - National - NZ Herald News
以前沖縄であったように、右側通行がある日から左側通行になるようなドラスティックな変更であれば、皆とても気をつけると思うが、この右折優先ルールが適用になるのは、そう毎日経験するようなことではないのでとかく忘れやすい。自分が気をつけていても相手が間違えるかもしれないのだから、本当にやっかいだ。

NZの銀行はテキトウ?

前にも書いたように、今回は日本の家が売れたので、日本からNZにまとまったお金を動かした。そこで、対照的な経験をしたので書いておく。
最近は調べていないが、日本の銀行でオンラインだけで海外送金ができるところは今でもほとんどないだろう。ボクが口座を持っている某外資系銀行も、ほとんどの取引はオンラインでできるが、未登録の送金先への海外送金は支店に出向く必要がある。10年以上口座を持っているが、支店に行くのは口座開設以来初めてだ。
妻の実家に電車で向かう途中、乗換駅にある支店に出向いた。待つことなく担当者が現れて、要件を伝え、書類を記入した。その後担当者は奥に入ったまま、なかなか出てこない。
妻の実家の近所は電車の本数が極端に少ない。次の電車を逃すと次は1時間待ちである。焦っている頃、ようやく出てきた記入済み書類のコピーをよく見ずに受け取って、駅に走った。
2時間近く電車に揺られ、妻の実家に着くと、先ほどの銀行員から電話があった。サインをすべき書類が一つ不足していたとのこと。送金を依頼する書類にサインはしたが、その前に外貨両替をしたときのサインが必要なのだそうだ。オンラインで自分でやれば簡単なのだが、たまたま窓口でやってもらったのだ。
困ったことに、FAXでも速達でもダメで、どうしても今日の日付で直筆でないとダメなのだそうだ。今から支店まで来てくれと言われたなら、相手のミスなのでやなこったと言おうかと思っていると、なんと、担当者が電車に乗って2時間かかるここまでサインを取りに来ると言うのだ。
夕方になり、彼女は本当に電車に乗ってやってきた。駅からの公共交通手段はないので、さすがにこちらから最寄り駅まで出向いて、駅のベンチで書類にサインをした。(無人駅なのだ)
その往復の時間に本来やる仕事があるだろうに大丈夫かなあと少し心配になった。コンプライアンス重視も、少しやり過ぎな気もする。
サインが漏れていたのは、当局がマネーロンダリングを恐れる海外送金そのものではない。ただの外貨両替である。オンラインならばワンクリックだ。海外の観光地の両替所ならば計算書すら渡されないこともある。
しかし実は彼女は、高額の引き出しや海外送金に必要なはずのボクの身分証明書のチェックを最後までしていない。コンプライアンスとは不正な取引を防ぐことだろうか、それとも形式的に書類のチェックをパスすることだろうか。

さて、ニュージーランドである。

以前のブログでも銀行のテキトウさ加減については何回か書いたことがある。
チェッキングとセービングの間違い再び

資金を受け取った銀行は、ボクがホームローン口座を持っているK銀行ではなく、老舗のN銀行である。K銀行のように歴史のある大銀行でない金融機関は、海外からの送金を受け取るのに他の銀行を経由しなければならない。経由する他の銀行がいくら手数料を差し引くかは、事前には分からないので、K銀行を指定して送金するのは避けたのである。

N銀行への入金は確認できたので、次にK銀行へ国内送金する。NZでは国内の銀行間の送金に手数料はかからない。

N銀行ももちろんオンラインでほとんどの取引ができる。しかし送金を試みるとエラー。エラーメッセージは不親切で分からず、FAQにも書いていないが、おそらくデフォルトの上限金額をオーバーしているらしく受け付けてくれない。どうやらデフォルトの上限金額はたったの1000ドル(約6万円)らしい。

そこで問い合わせの番号に電話した。上限金額を引き上げても、オンラインで振り込めるのは10000ドルまでであるので、今回の送金は今この電話でやりますよ、とのことである。それは助かるが、その適当さ加減はちょっとコワイ。

  • 振込先の口座番号を復唱しない。
  • 振込先の口座名義を聞かない。
  • 本人確認は生年月日と所有する口座の種類等についての質問だけで、PIN入力やパスワードは求められない。

会社の同僚とか、普通に隣で聞こえているわけで、ちょっとこのオペレーションはまずいと思う。携帯電話に送られてくるセキュリティコードを入力しないと送金できないインターネットバンキングの送金上限が初期状態で1000ドルなのに、電話だとこんなに簡単に何万ドルがあっさり他人の口座に出金できてしまうというのは、どういうことだろう。

今回は幸い何の事故もなく、無事K銀行に入金され、ホームローンの一部返済に充当されたわけだが、何事も本質度外視で形式重視の日本と、柔軟というかテキトウなNZとの違いをあらためて考えさせられる経験であった。

なぜNZに移住したのか

よく聞かれる質問だが、これほど答えにくい質問もない。
まずは、相手がどの程度の答えを期待しているのか見極めなければならない。
単なるスモールトークであれば「まあ、リラックスしたライフスタイルですかね。トーキョーの生活はビジーですから。」ぐらいに適当に答えておけば、それ以上は相手も興味がないので、むしろまじめに答えないほうがよい。
一応ここではまじめに答えると、日本の状況が行き詰っていて、先が明るくないことを、当時公務員をやっていたこともあって痛感したというのが一番で、次には海外に住んだり仕事をしたことがなかったので、チャレンジしたかったという気持ちもあったからだ。
しかしこの説明は、そもそも「日本の状況が行き詰っている」ことが分からない人には通じない。日本人でなくても日本関係の政治経済のニュースをウォッチしている人は、ある程度わかっているけれども、そういう人は少ない。あまりニュースなどを見ない人は、いまだに日本はお金持ちの経済大国だというイメージを持っていることも多い。日本人でも、世代が離れている人や、海外生活が長い人とは、問題意識が共有できないことも多い。
そういう人に、日本がどう行き詰まっているのか説明して理解してもらうことは大変で、むしろ無理なので、ここでもあえてそれは述べない。
そうやって今まで面倒なことから逃げていたわけだが、いつか逃れられない日が来る。それは自分の子供にこの質問をされる日だ。いつか必ず来るその日に備えて、真摯でかつ容易な答を用意しておかなければなるまい。

日常会話と仕事の英語はどちらが難しいか

日本にいる人に話を聞くと、自分の英語力を「日常会話なら何とかできるが、英語で仕事をするのは難しい」と言う人がいる。
”日常会話レベルの英語ができる。 → 次のステップ:仕事で使う英語。”
だと思っているのであれば、ぼくはそうは思わない。日常会話のほうが、仕事で使う英語よりも格段に難しい。
ぼくらが仕事で使う英語というのは、ほとんど日本語で言いたいことを単語レベルで置き換えればそのまま言えるし、相手の言っていることも単語が分かればそのまま訳せば分かる。
(ビルドエラーがでるんですけど)と言いたければ、「I'm getting build errors.」と言うし、「Can you comment out that method?」と言われれば、(そのメソッドをコメントアウトして)と言っているんだな、と分かる。
それに対して、日常会話は難しい。
Hi, how's goin'? / I'm good. だけが日常会話だと思ったら、それは大間違いだ。彼らの「日常会話」はそれでは終わらない。その後に続くのは、昨日のスポーツの結果や週末に家にペンキを塗ったことなどが延々と続くのだ。
会話で使われる単語は多岐に渡るし、文化背景が異なり、話のバックグラウンドが分からないので、全然他人の話を聞いていても分からないのだ。単語の置き換えレベルの話ではない。
どのくらい文化背景が異なるのかの例をあげる。ニュージーランド人はクイズが好きだ。パブでは毎週クイズナイトがあるし、職場のイベントでも定番。ウチの職場でも、毎朝クイズ大会があり、朝刊に載っているクイズが何問解けたかを部門ごとに競っている。
たとえばこんなクイズだ。

  • Truth or Consequenceと呼ばれる町があるのはアメリカのどこの州か。
  • 1992年の「Bigger, Better, Faster, More!」は誰のデビューアルバムか。
  • 20歳以上の運転手の血液中アルコールの上限は。
  • Otago Daily Times紙は何年の創刊か。
  • Bee Geesには何人兄弟がいたか。
  • Maurice Gibbは2003年に何が原因で亡くなったか。

ぼくには質問に出てくる固有名詞すら分からないが、必ず誰か答えを言う。これが文化背景が違うということだ。子供の頃から見ているテレビもスポーツも聞いている音楽も違うわけで、その蓄積が違うのだ。子どものうちや若いうちならばともかく、大人になってからとても追いつけるものではないし、追いつこうとしてもキリがない。
だから日常会話を簡単に考えないほうがよい。1対1で対話しているのであれば自分の知っている話題に誘導すればよいが、複数人の会話の輪に入るのは至難の業だ。
それに比べたら、もともと自分の専門分野である仕事の話は、単語の訳さえ分かれば大丈夫。自分の専門で、相手が知らないこと、気づかなかったことを指摘できれば、尊敬もされる。
英語に自信がないから、海外で仕事が見つけられないと思っている人は、いわゆる「英会話」を習うよりも、自分の専門分野で使われる用語を英語で何というのかをよく調べて、使えるようにしておいたほうが良い。

「ニュージーランドに移住したいITエンジニアのオフ会」やります。

3月に地震があったため延期していた一時帰国(2011年3月16日 延期しました)は10月になりました。
前回中止になった「ニュージーランドに移住したいITエンジニアのオフ会」を開催しますので、ニュージーランド移住を検討しているITエンジニアの方で、ニュージーランドの職場環境や就職活動の様子など筆者の話をナマで聞きたいという人がいれば、どうぞコメント欄から連絡してください。(連絡先など個人情報を含むコメントは公開しません。)
日時は10月22日(土)昼ごろ、場所は東京都内、対象は「ニュージーランドに移住したいITエンジニア」であればどなたでも結構です。何かを勧誘したり、参加費等をいただいたりするようなことはありません。よろしくどうぞ。