スチームエンジン見てきました

日本語でいうSL(蒸気機関車)のことを英語ではスチームエンジンと言う。Steam Locomotiveは間違いではないようだが、専門用語すぎるのか一般の人には通じない。
今日はスチームエンジンが牽引するレトロ客車のイベント列車が近所の駅に停車するというので、乗るわけではないが、トレイン大好きな2歳児を連れて見にいってきた。
欧米ではどこでもそうだと思うが、ニュージーランドでもスチームエンジンは、日本のJRのような通常営業をしている鉄道会社が走らせるものではなく、保存会のようなアマチュアのグループが趣味の延長で保有、メンテナンスして走らせている。廃線になった支線などを買い取ったり、借り受けたりして、そこを走らせているケースが多い。
ウェリントンにはSilver StreamとPaekakarikiの2箇所にスチームエンジンの保存会がある。Silver Stream(http://www.silverstreamrailway.org.nz/)は自前の線路があり、毎週日曜日にいつでも乗れるのに対し、Paekakarikiにある方(http://www.steaminc.org.nz/)は、自前の線路はなく、Kiwirail(NZ国有鉄道)の本線でのエクスカージョンやチャーターだけで、定期的に走っているわけではない。いつスチームエンジンが見られるのか、情報に注意していないと分からない。
アマチュアの趣味のグループでメンテナンスしている機関車や客車で国鉄の本線を走らせることができるというのは、日本ではありえないことで、とても楽しい。今年はないようだが、過去にはオークランド-ウェリントンの定期旅客列車Overlander号が、ここのスチームエンジンをチャーターして一部区間を牽引してもらうという、冬の閑散期の集客企画もあった。
ここのサイトを見ると、次は11月に、ウエリントンからネイピアを通ってギズボーンまで往復するツアーを募集している。スチームではなくディーゼル機関車らしいが、現在では旅客列車は走っていない、通常は貨物のみの区間なので、このような機会がなければ乗ることができない貴重なチャンスだ。
旅客列車が走っていない区間やKiwirail以外の保存鉄道も含めたニュージーランドの現存する鉄道路線図はここで見られる。
http://www.steaminc.org.nz/_content/NZR_System_subfr.htm

ウェリントンの最近のITエンジニア需給状況について

ジョブエージェントから最近受け取ったニュースレターからの要約。メモ代わり。

  • ウェリントンのマーケットは引き続きクライアントからの需要に応えるだけの、優れた求職者が不足している状態。
  • パーマネントでは、SharePoint、.NETのディベロッパーおよびBIのビジネスアナリスト、テストアナリスト、Wintelのエンジニアに需要がある。
  • コントラクターではIT Banking projectsの経験があるビジネスアナリスト、SASのアナリスト/ディベロッパー、IT Changeのプロジェクトマネージャー。
  • 今年の総選挙とラグビーワールドカップを前に、需要を先食いしている面はあるが、引き続き求職者は複数の選択肢があり、クライアントは優秀な人を確保するには早く動かなければならない状況。

海外にいながら日本の家を売る

最近は落ち着いているものの、ニュージーランドではここ10年で不動産の価格はとても上昇した。ニュージーランドでは個人のキャピタルゲインには課税されないので、投資目的で複数の不動産を持つ人が多いようだ。今まで不動産価格は上昇傾向だったので、余裕資金があるならば、転居した後も前に住んでいた家は売らずに貸しておいて、将来値上がりしてから換金すればよいと考える人が多いのだろう。
ぼくが日本にいるときに住んでいた家は、別に資産運用するつもりではなかったが、賃貸と売却と両方で募集したら、たまたま借りたいという人が先に現れたので、ずっと貸していた。
以前の記事(海外在住のまま不動産登記の住所変更をした)で書いたように、昨年賃借人が退去したので、インターネットで見つけた地元の不動産屋に売却をお願いしておいた。(賃貸の管理をしてくれていた業者は、専門が異なるらしく売却については実質何もしてくれなかった。)

どうやって取り扱ってくれる不動産屋を見つけたか

だいぶ値下がりしていて、おおよそ不動産屋が取り扱いと思うような金額で売れそうにないことは分かっていたが、インターネットのオンライン査定で、取り扱ってくれる不動産屋を見つけることができた。
メールでのやりとりで誠実そうな印象を受けたので、販売活動をお願いした。仲介契約の捺印のときには親族などの代理人を立ててほしいとのことであったが、ちょうど一時帰国の予定があったので、その際に訪問して契約書を交わした。
仲介業者としては売主と会って意思を確認しないというのはリスクであるので、それはまあ納得のいくことである。

現地に行かなくても売れるのか

これは結構厄介だ。不動産の取引は、決済・引渡し日に売り手、買い手、仲介業者、金融機関、司法書士が全員一同に立ち会って、契約書の捺印等をするという習慣があるからだ。仲介契約をしたときの不動産業者の担当者には、決済日には一時帰国してくださいと言われていた。
もちろん、これは単なる日本の商習慣で、全員が一同に集まらなくても、現実にはお金を動かすのは銀行だし、登記をするのは司法書士なので、その職を失う覚悟で、お金を持ち逃げしたり、不正な登記をしてしまうということはまずありえないだろう。残念ながら銀行員や司法書士が今後の収入を失ってもよいというほどの金額の取引ではない。それに、もしそんなことをするプロがいたら、全員が一同に集まったところで防ぐことはできない。
ちなみにニュージーランドには当然そんな習慣はないので、人に説明するのが難しい。
その後、値引き交渉などもあったりしたので、不動産業者の担当者に、決済日に一時帰国しなくてもよいように頼んでおいたところ、無事、一時帰国なしで決済ができた。
不動産の売却には原則として実印と印鑑証明書が必要だ。所有権移転の登記をするのに、前所有者の意思であることが確実でなければならないからだ。(登記という点では買う人は実印はいらない。しかし現実にはローンを組むのに銀行が要求する。)
印鑑証明書というのは、住民登録されている市区町村が発行してくれるものだ。ぼくらのように日本のどこにも住民登録がない日本人は、在外公館(大使館・総領事館)で、署名証明というのを発行してくれる。
署名証明というのは、証明してほしい書類に領事の目前で申請人が署名したことを証明してくれ、その書類と綴り合せる形式[形式1]と、日本の印鑑証明書と同じように単体の書類[形式2]の二つがある。
司法書士の指示は、形式1であったので、日付なしで署名捺印するように言われていた売買契約書、領収書や登記申請の書式などの大量の書類のうち、司法書士への「委任状」にこの署名証明をつけてもらって送り返した。
登記所が登記書類を受け付けてくれるのならば、それ以外の書類はサインであろうと、三文判であろうと、当事者が合意すれば法律的には有効であろう。

譲渡損失は申告できるか

買ったときよりも高く売るのが当たり前のニュージーランドとは逆で、日本では新築住宅は買ったとたんに値下がりするものだ。しかも今の日本では、バブル以前に買ったとか、よほど人気のある地域であったりしなければ、中古住宅が買った時よりも高く売れることはあまりないだろう。
それにしても、売却価格は14年前に買った値段のわずか21%であった。もちろんニュージーランドではこの14年で5分の1の値下がりなんてありえない。普通は逆だ。職場の誰もが驚く。斜陽の国日本恐るべし。
減価償却や諸経費を引いても何年分かの年収に相当する損失額が確定したわけであるから、今年度の収支は会計上大幅の赤字である。所得税を払う必要はないと考えるのが普通だろう。
もし日本で給与所得等があれば、少なくとも今年は損失の申告ができるので、給与から源泉徴収された所得税は全額還付されるだろう。ただし、原則として損失を翌年度に繰り越すことはできないというのは、ニュージーランドと違いちょっとアンフェアだ。(繰り越せる特例はあるが該当しない。)
ちなみに、日本に住所がなくても(税法上日本の居住者でなくても)、日本の不動産を売却して譲渡益が出たら、売却益を申告しなければならない。ということはつまり、譲渡損が出たら損失を申告できるということだろう。
しかし、所得がなければ所得税の確定申告をする義務はない。今年は家賃も受け取っておらず日本で申告する所得はない。翌年以降に損失を繰り越すこともできないので、つまり日本で譲渡損失の申告はできないし、したところでもちろん何の還付もない。
では、税法上居住地であるニュージーランドで損失の申告をして、所得税の還付を受けることができるのだろうか。日本の居住者が海外の不動産を取引して利益が出たら、日本の税務署に申告しなければならない。つまり損失も認められるということになる。ニュージーランドではどうなのだろう。
あまり期待せずIRDに問い合わせたところ、意外とすぐに回答が来た。

Any losses or profit received as a result of the sale of your property does not need to be declared in New Zealand on your IR3 return.

個人資産の売却益はニュージーランドでの申告は不要。つまり損失も申告できないということだ。
なお、現政権はキャピタルゲインの課税について消極的で、今年の選挙の争点になりそうだ。

誤記がありましたので修正しました。
「現政権はキャピタルゲインの課税について積極的で」→「消極的で」
本文は修正済みです。

トランス・タスマン路線運休は経済的理由?

6月中旬にチリの火山噴火による火山灰の影響でオーストラリア・ニュージーランドの航空路線は大幅の運休を余儀なくされた。オーストラリアとニュージーランドを結ぶ路線のことをトランス・タスマン・フライトと言うが、おかげでタスマン海の両岸で足止めを食った人がたくさん出た。ぼくらもこのときメルボルンにいて、予約していた日曜日のフライトがキャンセルになり、やっとカンタス航空のトランス・タスマン便が飛んだのは金曜日だった。
ところが木曜日に空港に行くとカンタス航空のトランス・タスマン便は運休なのに、ニュージーランド航空は運行していた。

カンタスのカウンターで交渉したが当日のニュージーランド航空は満席とのことで、翌日のニュージーランド航空の席を押さえてもらったが、結局翌日のカンタスが飛んだのでニュージーランド航空には振り替えずに済んだ。

カンタスの営業は、足止めされている客にホテルは簡単にとってくれるが、他社振替は渋る。
「エアー・ニュージーランドは低いところを飛ぶんですが。」
「それでなんの不具合が?」
などという会話をした。低いところを飛ぶと燃料は余分にかかるかもしれないが、客には何の不自由もあるまい。せいぜい少し揺れるかもしれないくらいだろうか。

その後、火山灰が地球を一周してまたトランス・タスマン便が運休になったが、全面運休したのはカンタス航空とその子会社のジェットスター航空でニュージーランド航空の影響は少なかったようだ。

今は3週目の火山灰が来ているが、また運休するのはオーストラリアの航空会社で、ニュージーランド航空は比較的飛んでいる。

そこで、飛行機が飛ばないのはAsh(灰)じゃなくてCashのせいではないか、と指摘する専門家が現れた。

http://www.stuff.co.nz/business/industries/5199168/Aircraft-grounded-for-cash-not-ash-analyst

いわく、カンタスは業績が悪いから余計な費用をかけないのではないか。エアー・ニュージーランドも業績は悪いが、国内線で儲かっているので、燃料代が1割余分にかかっても火山灰を避けて低いところを飛んだのではないか。難しい決断ではあるが、結果として短期的には大きくシェアを取ったし、顧客の評価も得られたのではないか、とのこと。

ジェットスターはあくまで運休は安全確保のためとしている。ジェット機は少しくらいの灰の中ならば安全に飛行できるが、濃度が高い灰の中を飛行するとエンジンにダメージを与える可能性があるとこの記事は結んでいる。

小さな子供を連れて海外旅行に行く馬鹿親

海外旅行の雑誌や、育児関係の雑誌の読者の声によくある、9か月の赤ちゃんとハワイに行って一緒に楽しみましただの、1歳の子供をシンガポールに連れていったら動物園で楽しんでいましただの、そういうのを見て、親が楽しみたいだけなのに、付き合わされてかわいそうにと思っていた。だいたい小さな子どもが何十万円もかけて珍しい外国に行こうが、歩いて近くの公園に行こうが、分かりやしない。物心が付く前であれば、後で楽しかったなぁと思い出すわけでもない。長距離の航空機などに閉じ込められるのは大人にとってもしんどいものだが、行った先で楽しいことがあるわけでもない子供にとってはもっと苦痛だろう。たまたま元気で帰ってきたから良いようなものだが、慣れない外国で病気でもしたらどうするのだろう。だいたい泣いている子供がいたりする飛行機に乗りあわせる他の乗客も迷惑だ、などと思っていた。自分たちがそうなるとは思いもせず。
それでも小さな子供を連れて飛行機に乗らなければならない人がたくさんいることは理解できる。国際結婚をしていたり、ウチのように親が住んでいる出身国から離れて暮らしていたりすると、子供を祖父母に会わせに行くこと自体が目的の「海外旅行」というのもある。NZ-日本の国際線に乗ると、必ず小さな子ども連れが何組もいるが、多くはそのようなケースのように見られる。
ウチの娘も2歳になった。これまで日本には3回、1-2泊の国内旅行は何度も行っている。今回は週末に数日の休暇を加えてオーストラリアのメルボルンへ旅行に行くことにした。ウェリントンからメルボルンは約4時間のフライト。動物園にでも行けば楽しいかもしれないが、2歳児にとってはウェリントンの動物園でも違いはない。要するに親が行きたいのだ。すまん、娘よ。
子供というものは予告なく突然具合が悪くなる。実は出発の前日になって急に吐いたりしていた。これはまずいかもと思ったが、当日には元気になっていたので、2か月も前にセール価格で予約していたものをキャンセルや延期をする勇気はなかった。(スケジュール変更すると同じ価格にはならない)これがまずかった。
到着の翌朝はなかなか起きあがらず、泣いてばかりで出かけたがらない。抱っこして連れだしたが、ずっと寝てばかり。起きると泣いてばかり。ほとんど見るものも見ずにホテルに帰ってきた。
次の日もその次の日もぐったりして寝てばかり。外に連れ出すこともできず、部屋に置いていくこともできないので、交替で外出した。
メルボルンは本当に都会で、建物は大きく、町並みも美しく広く華やかで、たくさんの人がいた。ウェリントンはニュージーランドの中では都会だけれども、メルボルンと比べたらつくづく田舎だと圧倒された。
いっこうに症状は改善せず、とうとう金曜の夜に救急病院を探してタクシーで乗り付けた。ホテルで調べて私立の24時間やっているとされる病院に電話したら、直接公立の子供病院(Royal Children's Hospital)の救急にアポなしで行くように言われたのだ。
救急の窓口ではたくさんの人が待合室で座って待っていた。トリアージと書いてある窓口に最初に並んだ。それほど待つことなく順番が回ってきて、ナースに状況を説明し、病人を見てもらうと、すぐに別室に案内された。熱が3日も続いていることと、呼吸が苦しそうなのが優先順位を上げたのだろう。
以前効いた吸引剤(2010年9月23日 医療費無料 )は効果がなく、酸素吸入をしながら、ステロイドや抗生物質を点滴することになった。入院だ。肺の感染ということであるから日本語で言えば「肺炎」。抗生物質がない昔だったら、死んでいてもおかしくなかった。せめてもの幸いは、滞在地が近代的な病院のある大都市だったことだ。
日曜日の帰国予定は延期。結局酸素チューブも点滴も外れて、退院できるようになったのは水曜日だった。この間、病院の近くにホテルも引っ越して、交替でシャワーを浴びたり、自分たちの食べるものを買ってきたりしながらずっと付き添った。
悪いことは重なるもので、チリの火山噴火の影響で、退院後も飛行機が飛べない状態が続いていて、航空会社が取ってくれたホテルに泊まり、ようやく金曜日に帰国した。思わぬ長期休暇で、職場をずいぶんと空けることになった。
娘はニュージーランド国籍なので、幸いオーストラリアでの医療費は無料。(2010年5月20日 何か不公平 )延長した滞在費もクレジットカードについている海外旅行保険で大部分はカバーされるはずだ。しかし、仕事を休んだ分の所得は誰も補償してくれない。子供に辛い思いをさせたのはもちろんだが、金額的にもキャンセルや延期をしたほうが安かった。馬鹿親への罰だ。
といわけで、子供を連れての旅行、少しでも具合が悪い時には勇気を持ってキャンセル・延期をすること。
写真は、6日間お世話になったメルボルンのRoyal Children's Hospital。中の設備は少し古かったが、後ろに新しい建物が建築中であった。

イミグレーションポリシーの重要な変更

昨日6月1日、ニュージーランド移民大臣から重要なポリシーの変更が発表された。
http://www.beehive.govt.nz/release/immigration-changes-strengthen-export-education

要点は次のとおり。

2011年7月25日から
  • NZの学校を卒業した後に取れる職探しのためのビザ(Graduate Job Search Visa)は2年以上ニュージーランドで勉強した場合のみ。(以前は永住権申請でポイントになる学歴であれば通学期間は9か月でもよかった)
  • 今までGraduate Job Search Visaは一生に1回しか取れなかったが、前よりも高い学歴(bachelorかpostgraduate)を取れば、2回目も取れるようになる。
  • 学生に同伴するパートナーがワークビザが取れるのは、postgraduate以上か、Long Term Skills Shortage Listに載っている学歴でかつBachelor以上の場合のみ。(以前はLong Term Skills Shortage Listに載っていればBachelorでなくてもよかった)
  • ワークビザ所持者が学校に通うには、仕事に必要なトレーニングであることを雇用者に証明してもらう必要があったが、不要になった。
  • 永住権申請における学歴ポイントがLevel6以下の学歴の場合40ポイントになる。(以前は50ポイント)
  • 同じくLevel9(修士に相当)以上の場合には60ポイントになる。(以前は55ポイント)
  • NZで得た学歴に対して加算されるボーナスポイントはBachelor以上でないと加算されない。
2012年3月から
  • 学生ビザを取るときに証明しなければならない生活費の金額の基準が年10000ドルから15000ドルに引き上げられる。
  • Graduate Job Search Visaを取るときに証明しなければならない生活費の金額の基準が2100ドルから4200ドルに引き上げられる。

私の解釈が間違っていたらご指摘はコメントでお願いします。私はビザのアドバイスをする有資格者ではないので、こういう場合はどうですか、みたいな質問はご勘弁ください。

2011年6月4日追記:
イミグレーションのサイトからダウンロードできるPDFが更新されていて、2年以上通学しないとワークビザが出ないという新ルールは、すでに学校に通っている人、卒業した人、7月25日よりも前に入学した人には適用されないらしい。

2011年6月28日追記:
イミグレーションから再度ポリシーの変更があった。

  • 2年以上のコースを修了しないとワークビザが取れないのは、2012年4月2日以降に開始されるコースに入学した人から適用になる。(以前の発表では2011年7月25日以降)
  • postgraduateに加え、Level7の1年のコースもすべて例外となり、2年通学しなくてもワークビザが取れる。

新年度予算が発表に

昨日のトップニュースは新年度の予算が発表されたこと。今日も次々と予算関連の記事がアップされている。
http://www.stuff.co.nz/business/budget-2011/more_headlines

2月に発生したクライストチャーチ地震の復興費の捻出のため、緊縮予算である。Kiwisaver(日本の財形年金貯蓄に類似)の政府の補助のカットとか、Working for family(日本なら子ども手当?)がもらえる所得のボーダーが下がるとかがメインである。Kiwi Bondという震災国債みたいなのも出るらしい。
http://www.stuff.co.nz/business/budget-2011/5026887/Quake-recovery-to-get-Kiwi-Bond-boost

日本の新聞だと、予算が発表されると必ず「夫婦子供2人の標準世帯でこんなに負担が増えます」みたいなステレオタイプの記事がイラスト付きで載るのがお約束だと思うのだけど、こちらの報道はもうちょっと冷静だ。見出しは多少煽り気味の時もあるけれど、だいだい記事は発表内容を淡々と伝えているだけで、オピニオンのコーナーで賛否両論を紹介しているが、まあ全体としては、まあしょうがないんじゃない、こんなモンでしょうという感じ。職場の同僚の話でも、「国民の負担が増えてけしからん」みたいな意見はなく、「ああそうなんだ。地震があったからしょうがないよね」くらいが大勢だ。

何しろ国の規模が小さいので、何でも文句は言うが負担増はダメ、国が何とかせい、みたいな無責任な意見は少なくて、割と国の問題は自分たちの問題と考える人が多い。だから大きな変更の意思決定も理解が得られて進みやすい。これは国が小さいことのメリットだと常々思っている。

財務大臣によると先の地震による経済損失は150億(NZ)ドルでGDPの8%に相当するのだそうだ。それを伝える記事には続けて、3月のジャパンの日本の地震とツナミによるダメージは同国のGDPの3-5%に相当すると参考情報が書かれている。各紙とも同じことが書いてあるから、たぶん財務大臣が続けてそう言ったか、記者会見の資料にそういう情報があったのだろう。つまりそれだけ相対的にダメージが大きい、だから国民負担にご協力を、と言いたいわけだ。

日本の名目GDPは5兆USドルくらいだから、地震とツナミによるダメージは1500億ドル(US)から2500億ドルくらいと言っているわけだ。ふーん。

いや、それは物理的なダメージだけで、企業の生産活動の停止によるダメージや、物資不足や過剰自粛による消費停滞のダメージが入っていないでしょうとか、そもそもまだこれからどんどん増えそうな福島第一原発の損害や補償が入っていないでしょうとか、いろいろツッコミどころはあるわけだけれども、まあそれはここでは議論しない。

ただ気づいたのは、こういう大災害の復興費用は、「国」という単位で負担しなければならないということだ。世界各国から災害直後の人命救助の支援や、被災者のための義援金は送られてくるが、莫大な復興費用そのものは発生した国が負担しなければならず、誰も助けてはくれない。民間の損害の一部は保険でカバーされるが、国の災害支出をカバーする保険制度はない。

つまり、クライストチャーチ地震規模の災害がオーストラリアや日本のような大きな国で起きていたら、それほど政府の財政に対するインパクトは大きくなかっただろうし、逆にニュージーランドの南島とか日本の東北地方が独立した国家だったら、行政サービスのダウングレードはより著しいものになっただろうということだ。

ニュージーランドのような小さい国は、意思決定が容易で変化に強いが、大災害のような大きな財政支出には少し弱い、と思った。でもまあ今のところ増税というわけでもないし、日本のような巨額の国債残高を抱えるわけではないし、この程度で済んで良かったというのが本当のところだ。