大災害が起きたらどうする

今年の2月にクライストチャーチで大地震が起きて大きな被害が報道されたときには、日本の知り合いという知り合いから「大丈夫?」と連絡をもらった。
それはそれでありがたいことではあるのだが、ぼくの住むウェリントンとクライストチャーチはそもそも別の島だし、東京から名古屋か仙台くらいの距離に相当する。だからいくら大きな地震でも直接の影響は何もない。しかもM6.3という規模自体はそれほど大きくない地震だったので、直線距離でもざっくり250kmくらい離れたウェリントンでは揺れたことすら気づかなかった。
それから3週間も経たないうちに日本での巨大地震である。今度はこちらで会う人会う人から「日本のご家族は?」と聞かれるようになった。
うちはふたりとも千葉県出身で家族に影響はなかったわけではないが、津波で家族や家を失った人に比べればなんでもない。(と思うことにしている。)
今回は運良くどちらの災害にも直接の被害は受けずにすんだわけだが、自分たちが同じような災害に巻き込まれたらどうするかということを考える良いきっかけでもあった。ウェリントンでも日本のように頻繁に有感地震が起きるわけではないが、記録が残されるようになって以来、1848年、1855年、1942年に大地震で大きな被害が出ている。だからいつ次の大きな地震が起きてもおかしくないことはよく知られている。
自分の住む町にどんな大きな地震が起きても、大津波で街中すべて流されてしまうような場合でない限り、運が悪く命や家を失うという極端なケースよりも、幸い家族の命は無事で家も大破をまぬがれたというケースのほうが可能性がはるかに高く、シミュレーションする意味がある。
死者や大破した建物にはニュース価値があるのだが、自分がそうなる可能性はそれほど高くない。たとえばクライストチャーチ市の人口は37万人だが、犠牲者のうちクライストチャーチの方は86人(0.00023%)である。大半の人が被った被害は、停電や断水、仕事がなくなった、学校が休みになった、余震がこわい、などだろう。
だから大したことはないと言うつもりは全くない。亡くなった方もいるのにわがまま言うなと言われても、やはり文明国で生まれ育ったら停電や断水で冷蔵庫も洗濯機も水洗トイレも使えない生活なんか一日だって嫌だ。
たぶん、逃げるな。
クライストチャーチと同じようなことがウェリントンで起きたとすると、1週間は会社も学校も休み。仕事がないのならば、電気も水道もないところにいても仕方がない。ぼくの仕事は電気がないとできない。復旧活動に従事する人、インフラを維持する仕事に従事している人は仕方がないが、それ以外の人は残るのも逃げるのも自由だ。見込みが1週間くらいだったら、オークランドにでも行って知人に助けを求めるだろうが、1週間以上だったら、日本に帰って家族に身を寄せる。
クライストチャーチでも6万人くらいが出ていったらしい。
これは逆の場合もあるわけで、今回は幸いなかったが、日本の家族が被災して、避難先を求めているのであれば、ウチに来てもらうこともできる。
親戚がみんな近所に住んでいるとこういうことはできない。今まで考えたことがなかったけれども、これも海外移住するメリットの一つではないかと思った。

子供にカネがかかるか

うちには2歳になったばかりの子がいる。子供というのは小さいうちは手間がかかるので時間を取られるが、実はあまりカネはかからない。
間接的に、仕事をする時間が減るので収入が減るとか、仕事をする間預けるのに費用がかかるというという点ではカネがかかるのだが、2人世帯が小さい子供を入れて3人になったところで、食費や住居費や光熱費などの純粋な生活費が急に1.5倍になるわけではない。保育園に預けたりしなければ、教育費なども小さいうちはかからない。
ニュージーランドでは日本の保育園に相当するものはデイケアと呼ばれるのが一般的だ。日本のことはよく知らないのだけれど、利用料は日本に比べると高めだと思う。ウチの近所では1日60ドル前後が相場らしい。週5日で300ドルくらいになる。地域によっては2ベッドルームのフラット(賃貸アパート)が借りられるくらいのコストだ。両親が働いているかとか収入とかは関係ない。受けるサービスに対する対価を払う。ただし、シングルペアレントか、両親が二人とも働いていれば、申告すると3分の1(上限あり)が税務署から返ってくる。
幸いウチはデイケアに行かせていない。それ以外は、出産も、医療も、伝染病の予防接種も無料なので、あまり出費という点では大きなインパクトはない。ウチはまだ行っていないが幼稚園も学校も無料だし、お受験や塾やお稽古事もあまり一般的ではなく、大学の学費もスチューデントローン(以前の記事:スチューデントローン完済)で本人が払うのが普通なので、この先もあまり心配していない。
海外に住んでいるコストで、最大の出費は飛行機代だ。
ウチは夫婦二人とも日本人なので、片方が現地人の家庭に比べ、帰国の頻度が多いようだ。1度も帰国しない年というのはない。2回以上帰国した年もある。
国際航空運賃は2歳になると座席が必要になり、一気に高くなる。航空会社によって多少異なるが、2歳未満は座席なしで大人運賃の10%、2歳以上12歳未満は大人運賃の75%ということがほとんどである。
娘は4月が誕生日なので2歳になる前の3月のうちに日本にもう1回行っておこうとしたが、東日本大震災の影響でキャンセルしたのは以前書いたとおり。
ウェリントンから東京への往復運賃は、一番安い席が売れ残っていたとしても通常で2000ドル以上する。たまにキャンペーンがあっても1700ドルを切ることはまずない。以前は二人で4000ドルくらいだったのが、娘が2歳になった今となってはキャンペーンでないときに買うと6000ドルくらいになる。飛行機代が年収に占めるウェイトは大きい。
結論は特にないのだが、子供に生活費はあまりかからないが、飛行機代がかかるなあと思っただけだ。

休業日に無人のまま開店したスーパー。顧客はセルフレジで代金を支払う

年中無休の大手スーパーといえどもイースターは閉店しなければならない。
ニュージーランド第四の都市ハミルトンにある大手スーパーPak'n Saveでは、コンピューターの不具合か、スタッフが誰もいないのに通常通り朝8時に店のシャッターが開いてしまった。
来店した顧客の証言によると、店内照明も点灯し、音楽もかかっていたとのことである。
Pak'n Saveにはセルフスキャンレジというのがあり、顧客が自分でレジで会計をすることができる。多くの顧客はセルフレジでちゃんとお金を払って出ていったもよう。しかし、誰かがアルコール類をスキャンしたときに、スタッフによる年齢確認の認証ができずに止まってしまったらしい。
店のオーナーによると、盗難による被害は僅少とのこと。
Pak 'n Save owner sees a good side
Police stuck over supermarket free-for-all

NZの電気代は高いのか

生活感覚から、NZは日本と比べて電気代が高いという人がいる。原発がないから電気代が高いのだという人もいる。本当だろうか。
日本のように電力会社が地域独占になっているのは今では先進国ではむしろ少ないようだ。NZでも他の欧米諸国同様、消費者は複数の電力会社の料金プランを比較して、自分のニーズにあった電力会社と契約することができる。
ぼくもいろいろ比較してシミュレーションしてみたが、どこもだいたい似たり寄ったりだ。
ここではGenesis Energyのウェリントンの料金のうちClassic Planというのを見てみると、固定料金が1日あたり34.50セント、従量料金が1kWhあたり23.64セントである。*1
東京電力の従量電灯Bで40Aの契約だとすると、固定料金が1か月あたり1092円、従量料金は最初の120kWhまで(第1段階料金)1kWhあたり17.87円、120kWhをこえ300kWhまで(第2段階料金)22.86円、300kWhを超えた分(第3段階料金)は24.13円である。http://www.tepco.co.jp/e-rates/individual/data/chargelist/chargelist01-j.html
©TEPCO
今円安になっているが、今日のレート66.16円/1NZドルで換算すると、Genesisは固定料金が1か月696円、従量料金が一律1kWhあたり15.64円ということになるので、それでも東京電力と比べるとずいぶん安いのである。
それでもなぜ高いという気がする人が多いのかというと、3つほど理由が考えられる。

そもそも日本でいくら払っていたか知らない

日本では自分で電気代など払っていなかったが、NZに来て初めて所帯を持った人とか、日本では自動引き落としで特に気にしていなかったという人が多いのではないだろうか。*2

脳内換算レートが高い

以前ニュージーランドドルはいくらなのという記事を書いたことがあるが、いくらで換算するかいうのは実は難しい。1ドル100円くらいで暗算している人にとっては、NZの物価は何でも高い。

電気の使用量が多い

日本ではガスがない家というのはまずないが、NZではガスを入れていない家が多い。そういう家では料理もシャワーも暖房もみな電気だから、特に冬期の電気使用量は跳ね上がる。そもそも電気代の大半はシャワーのお湯だろう。日本ではガスでお湯を沸かすのが普通だ。
それから一つ一つの家電の電気使用量も大きい。食器洗い機なんかも日本のように小さいのはない。暖房器具も日本では気を付けないとブレーカーが上がってしまう1200Wくらいのものが普通だ。
うちは日本にいるときには第3段階料金になる300kWh/月を超えることは、真夏のクーラーを使うとき以外はまれだった。こちらではガスを入れているというのにそれでも300kWh以下の月のほうが少ない。
結論としては、NZよりも日本のほうが電気代の単価は高いが、ガスが普及していて、住宅もコンパクトで小さい家電が多いので、電気の使用量が少ないのであろうと考えられる。

*1:税込。期限内に支払った場合

*2:このたびの日本の電力不足で多くの人が電気料金についてのさまざまな提案をされているが、普段立派な見識を述べておられる方でも、そもそも以前から日本の家庭の電気料金はたくさん使うと単価が高くなる料金体系であることを知らない人が多いようで、意外な気がした。使用量抑制のためにそうなっているのでいるのであろうが、知られていないのでは抑制にならないと思う。

カクテルパーティー効果

心理学の用語にカクテルパーティー効果というのがあって、騒がしいパーティの場でも、自分の名前や興味のある単語などは聞き取れるというものであったと思う。
少し違うのだけれど、うちの1歳児は、そばで大人同士が話をしているとき、たまたま知っている「くるま」「でんしゃ」などの単語があると、突然反応することがある。
ぼくも会社では自分に話しかけられた内容はだいたい分かるけれども、周りの人が話している会話はほとんどわからないので、子供と同じだ。
それでも周りの人の会話の中で、「Japan」とか「Earthquake」とか「ツナーミ」いう単語があると、それだけがカクテルパーティー効果のように耳に入ることがある。*1
残念ではあるが、時間が経つにつれて、関心も薄れてきたのか、耳に入る回数は減ってきた。
ところで、ウェリントンでも3月26日からJapan Relief Weekが始まり、Crane Aidというファンドレイジングが行われるので、ここでお知らせ。
http://craneaid.org/

*1:と言っても、「Earthquake」というのはクライストチャーチの方の話のことが多い。

契約違反

以前空港に安く行く方法という記事を書いたことがあるが、自分たちがウェリントン空港に行くときは自家用車で行って、空港の駐車場に停めることが多い。日本から戻ってくるとかなり荷物があるので、一般の交通機関を乗り継いで帰宅するのは困難だからだ。
ウェリントン空港の駐車場は、空港の敷地内にある以外、外部の民間*1の駐車場というのはほとんどない。いや多分ない。ターミナルからの距離により料金が異なるが、バンで送り迎えしてくれる一番遠いところに1週間くらい停めると、駐車代が100ドルくらいで、乗合のシャトルでぼくらの住むところまで往復するのと同じくらいになる。決して安い金額ではないが、家族や友人が送り迎えしてくれるのでなければ、現実的な方法は他にない。
乗合シャトルは他の方面に住む人と混乗で、たいていウチは最後なので、とても時間がかかる。同じくらいの金額ならば、自家用車を空港駐車場に停めるという選択になる。
空港の駐車場は事前にオンラインで申し込んでおくと20%引きになるので、利用しないのは損だ。しかも、行ってみるといつもかなり車がいっぱいで空きスペースが容易に見つからない。飛行機の時間は決まっているのに、予約せずに行って満車ということがあっては大変だ。
しかも良心的なことに、24時間前までにキャンセルすれば全額払い戻しすると書いてある。実際に前回は旅行期間を延長したので、シャトルのほうが安くなることになり、オンラインで駐車場をキャンセルした。ちゃんとカードで支払った駐車代は全額カードの口座に戻された。
今回も3月の帰国予定に備えて、2月のうちに駐車場を予約してカードで支払った。もちろんキャンセルすれば全額払い戻しするという案内も確認した。

前回の記事に書いたように、今回の日本行は延期ということで、フライトをキャンセルしたので、駐車場もキャンセルすることになった。ところが、オンラインの駐車場予約画面にログインすると、キャンセル・変更のメニューもボタンもなくなっている。
念のため、Terms & Conditions and Helpを見てみると、記載が追加されている。

3月中にオンラインで予約された駐車料金は100%クライストチャーチ地震に寄付するため返金は不可」とのこと。
これを見てから申し込んだ人は、返金されないのは承知しているのだからよいが、クライストチャーチ地震の前に申し込んだ人まで返金されないのはおかしい。
キャンセルする代わりに、メールで変更を申し込めと書いてあるので、メールをしたが、案の定返事が来ない。そこで、なんども電話をしたが埒があかない。
24時間前のキャンセル期限も近づき、業を煮やして、空港会社の社長宛に手紙を書いてFAXした。

Wellington Airport CEO Steve Fitzgerald様
2011年3月17日
空港駐車場に関する苦情
貴社の駐車場サービスに関しての苦情を申し上げます。
まず、私が2011年2月10日に2011年3月19日からの駐車場を予約したとき、貴社のウェブサイトでは手数料なしでキャンセルできると書かれておりました。しかし、その後条件が変わり、返金不可とされました。
私は日本への親族訪問を予定しておりましたが、ご承知の災害によりキャンセルせざるを得ませんでした。航空会社はキャンセル料を免除してくださいましたが、貴社は予約の時点では可能であったはずのキャンセルを不可としております。
これはフェアではありません。残念ながら契約違反であると言わざるを得ません。この件について何ら処置をとっていただけない場合には、法の助けを借りることになるでしょう。
次に、御社のウェブサイトにはキャンセルをする代わりにメールか電話にて変更を申し込むように書かれております。私は2011年3月15日に変更を依頼するメールをしましたが現在まで何ら返信をいただいておりません。また2011年3月16日から17日にかけて合計6回電話をし、J****とおっしゃる方とお話ししましたが、空港のマネージャの指示がないと変更ができない、メールも出せないと言われるばかりでした。
私のもともとの予約は3月19日朝6時です。貴社の約款によるとキャンセルの期限は24時間前となっています。これまで述べましたように、私は期限までに貴社に連絡する出来る限りの努力をしました。しかし貴社はその確認の返信をしておりません。
もし3月18日までに書面で確認をいただけない場合には、法的措置を取らざるを得ません。証拠となる記録はすべて保管してあります。
また、私の経験したことは地域の皆様にも有用な情報ですので、地元のメディアに投稿することも検討しております。
遠からずお返事をいただけることをお待ちしております。
敬具
署名

よくこういう苦情やなんかの手紙を書かせる問題がIELTSのGeneralモジュールのライティングの1問目で出る。(時間配分として20分くらいで書き終えなければならない。)日本語にするとずいぶんキツイようだが、問題集の模範答案なんかではこれくらいのキツイのをよく見る。
18日の午後3時半に文中のJ氏からメールがあり、返金するので銀行口座番号を通知願いたいとのことであった。
無事返金されたら、そのお金は赤十字を通じて日本の被災地に送るつもりだ。

*1:空港も民間会社だが

延期しました

前回の記事との空白の間になんとニュージーランドと日本の両方で未曽有の大災害が起きてしまった。
いろいろ言いたいことはあるが、正直何を書いていいか迷っている。
とにかく、前回帰国しますと言ってしまったので、延期することにしましたとは書いておきたい。
東京近郊の交通状況が悪いことと、千葉県北部の妻の実家がダメージを受けていて、依然断水が続いているということから、小さな子どもを連れての移動・訪問は不適当と思われるため、延期することにした。*1
延期といっても、現時点ではいつにするのがよいのか全くわからない。幸い今回予約した航空会社はキャンセル料なしの取り扱いをしている*2ので、いったんキャンセルして全額払い戻してもらうことにした。
ともあれ、被害にあわれた地域の方に、お見舞い申し上げます。一日も早く元通りの生活を取り戻されますよう願っております。

*1:すでにオフ会参加希望の方には連絡しました。

*2:今回予約したシンガポール航空の場合。ニュージーランド航空は期日の変更のみ手数料なしで取り扱う。